みんなの健康Q&A/糖尿病(5)治療法


食事・運動が基本/血圧、血統の監理が重要

しんクリニック 辛浩基院長

  糖尿病の治療について教えて下さい。

  糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法です。これで不十分な場合には薬物療法を行います。

  食事療法はどうするのですか。

  食事療法は糖尿病治療の根幹となります。食事療法といっても、何を食べてはいけない、粗食をしなければいけないというものではなく、その人に見合う必要な量だけバランスよく食べ、それ以上食べないということです。年齢、性別、体重や労働量などによっても違いますが、具体的に身長160センチの太っていない成人では、1日の総摂取量は約1400〜1600キロカロリーとなります。

  運動療法について教えて下さい。

  糖尿病でもっとも効果的な運動は酸素を十分に取り入れて行う有酸素運動で、ウォーキング(早歩き)、サイクリング、水泳などです。

 とくに、いつでも、どこでも、1人でも行えるのが歩くことです。1日1万歩を目標に歩きましょう。1回に20分以上、食後1〜2時間以内に、週3回以上行わないと血糖を十分に下げる効果にはなりません。

  薬物療法にはどのようなものがあるのですか。

  内服薬には、経口血糖降下剤をはじめ、現在種々の新しい糖尿病薬がどんどん開発されており、それらをうまく組み合わせ使用することにより血糖を十分に下げることが容易になってきました。

 経口薬を用いても血糖コントロールがつかない場合にはインスリン療法をします。インスリンを注射しているからといって糖尿病が重症だと誤解されがちですが、決してそんなことはありません。

 インスリン注射をして血糖が良く、合併症がなければむしろ糖尿病でも元気な状態でいられます。最近では、使い捨てのペン型注射器により痛みもなく簡単になっています。さらに将来、注射ではなくインスリンの吸入薬が研究、開発されるでしょう。

  「糖尿病が治る」という薬を試したいのですが。

  そのような実に多くの民間療法が出回っています。それらは医学的に証明されないものが多く、たとえ効いても微々たるものです。しかも高価で、本当に効くならとっくに医師が治療に取り入れています。民間療法を信じ、せっかくの治療をせずに糖尿病の合併症を悪化させる例が非常に多いのです。

  治療の目標を教えて下さい。

  日常生活では、まず体重を標準体重にすることが大切です。また血圧の管理も重要です。心臓や細小血管障害のリスクを減少させるために、最近のWHO/ISHガイドラインでは、糖尿病患者では、血圧を130/85oHg未満を目標にするように指摘されています。糖尿病では、少なくとも空腹時血糖値は120r/dl以下、食後でも180r/dl以下を目標にして下さい。

  血糖値以外に治療の目標となるものはありますか。

  HbA1c(グリコヘモグロビンA1c)という検査で、採血で知ることができます。これは赤血球の中にあるヘモグロビンにぶどう糖がくっついたもので、正常値は5.8%以下です。

 これは臨床で非常に役立つ検査で、過去1〜2ヵ月間の血糖の状況を知ることができ、血糖値が高くなると、この数値が増えます。HbA1cが8%以上では、合併症の危険が高く、糖尿病患者では、常に7%以下を目標に維持することが大切です。

 最近、英国で20年におよぶ大規模調査が行われ、HbA1cを1%低下させることにより、糖尿病に関連した死亡を25%、合併症の進展を35%軽減させたという報告がなされ、いかに血糖値を下げることが重要かが証明されました。(おわり。東京都大田区西蒲田7―5―11、TEL 03−3738−1112)