ニュースの眼/1周年迎える金剛山観光


 朝鮮アジア太平洋平和委員会(ア太委)と南朝鮮現代グループとが推進している金剛山観光が、18日で1周年を迎える。当初、1年も続かないと言われた観光事業だが、この1年間で約14万人が参加した。「南北の和解に大きく貢献した」といわれる一方で、観光客による「亡命工作事件」や、当局の介入など、事業の推進には障害もある。

 「高くそびえた毘廬峰(ピロボン)/雲をそっと抱いて/私はまた、夢をみる…/兄弟に会いに行く道/車窓の外では/兄弟が温かく迎えてくれる」金剛山を見学した南朝鮮のある中学生の詩だ。

 先月17日から4日間の日程で、南朝鮮の中学生264人が金剛山を見学した。ソウル市教育庁が企画したもので、写生大会や船上討論会が行われたが、ほとんどの生徒が「南北の小さな差異にこだわるのではなく、お互いを認めれば統一は実現する」と異口同音に語ったという。

 安泰煥君(中3、音訳)は「北に着いた瞬間、まるでタイムマシンに乗って20年前に行った」ように感じたが、時間が経つに連れて田舎臭く思っていた北の人々が純真に見え「ただお互いが住む方式が違うだけだと考えるようになった」と話した。

 また李知恵さん(中3女子、音訳)は「テレビでギャグマンが、北の方言を真似てお笑いのネタにしているけれども、分断によってもたらされた言語の異質化は悲しむべきもので、笑うことではないと思う」と大人の無神経さを批判した。

 北出身者が故郷を一目みたいという思いで金剛山に登るのとは異なり、一般観光客とくに純真な子どもたちが、金剛山観光を通じて南北の現状と和解への課題を感じ取った意義は大きいと言える。

 ちなみに慶南大極東問題研究所が観光参加者を対象に行った調査では、1996人中62.8%が南北交流に貢献したと答えている。

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 今年6月に起きた「亡命工作事件」は、一方で金剛山観光事業が南の対北工作に利用されているという事実を露呈させた。

 南の観光客が、北の案内員を南へ亡命するようそそのかしたというのが、事件の概要。亡命を勧誘した主婦は、謝罪文を書いて釈放されたが、この事件で金剛山観光は約40日間、中断した。

 南当局は工作を否定しているが統一研究院の金炳魯研究委員は「金剛山観光事業は、北朝鮮住民の伝統的な価値体系を大きく揺さぶる事件であり、この点で社会変化を招来する潜在的爆発力を持った開発事業だ」(慶南大極東問題研究所主催の金剛山観光1周年シンポジウム)と述べている。

 融和政策を通して北の体制変化を促すという金大中「大統領」の「太陽政策」に通じるもので、金剛山観光を承認した当局の意図がどこにあるのかを示唆している。

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 亡命工作以外にも、観光料の「軍事費転用疑惑」や金剛山開発独占契約問題など事業を進める上で、いくつかの障害が存在する。

 いずれも南朝鮮当局が持ち出した問題で、林東源統一部長官は「政府も軍事費に転用することを遮断するために、(観光料を)現物支給する方案が可能になるよう努力する」と述べている。

 だが、米ハワイ大学の徐大粛教授の言葉を借りると「北朝鮮は金剛山開発の代価として受け取っている外貨が無くても軍事力を養うことができる」のだ。

 また朴健栄カトリック大学教授は、観光料が軍事費に転用されているのなら、北の軍事費支出が増加しているはずなのに、実際には98年度から99年度にかけて約3000万ドルしか増えてないことを指摘し、軍事費転用説を否定している。

 ここで見えてくるのは、金剛山観光事業で南朝鮮当局が、なんとか主導権を握ろうとしている事実だ。

 今後も金剛山観光事業には、紆余曲折が予想されるが、これまでの経験を生かすことが、事業の発展に欠かせないだろう。(元英哲記者)