インターネット経済革命/乗れるかEC(電子商取引)の波


 インターネットを利用したビジネス「EC(電子商取引)」が急速に拡大している。あらゆる経済活動が電子化され、地球規模のネットを通して時間・距離を超えた需給関係がつくり出されており、その様相は「デジタル経済革命」と呼ぶに相応しい。今後はネットと無縁でいられる業種はないとさえ言われ、その波は目前に迫っている。

 

急拡大/米国がリード

 インターネットの普及速度は、極めて速い。既存のメディアではユーザーが5000万人に達するまで、ラジオで38年、テレビで13年、パソコンで16年かかったが、インターネットはわずか4年だ。

 トップを走るのは、やはり米国だ。1億5000万人を超えたと言われる世界のネット人口の過半数を占め、今年中には1億人に届こうかという勢いだ。ネット関連の経済規模も年平均で74%という驚異的な伸びを記録。昨年のクリスマス商戦では、ECの売上が40億ドルを超え、店舗販売の売上を上回った。

 安い出店・運営コスト、在庫を持たない身軽さ、中間マージンを排除できる利点を生かし、アイデア一つで参入するベンチャー企業も多い。1人で自宅で起業し、数年で億万長者という例も少なくないという。

 一方、日本のネット人口は1700万人。ECの市場規模も昨年約1700億円と、米国に比べると、今なお未開拓だ。

 

脱常識/斬新さで勝負

 ECで代表的なのは、消費者がネットを通じて商品を購入するオンラインショッピングや、金融・証券・保険などの取引を行うオンラインサービスだ。

 多くのECサイトは、破格の安値や充実した品揃えを売りにしている。米国の書籍販売サイト「アマゾン・ドット・コム」は数百万冊の品揃えを誇り、利用者は1000万人に上る。日本では、個人商店を集めた「楽天市場」「逸品」などのモール(商店街)が有名だ。

 しかし、ECの特徴は「非常識」とさえ言われるアイデアの斬新さにある。

 例えば各種商品の小売りを手がける米国「バイ・ドット・コム」は、他のサイトの商品価格を検索しながら、自店の最安値を更新し続ける。原価割れする商品もあるというが、圧倒的な集客力による広告収入で利益を上げている。

 企業と顧客を仲介する「プライスライン・ドット・コム」(米国)は、消費者が価格を決める。ホテルや航空券を安値で求めている顧客と、空室・空席をさばきたい企業とをマッチングさせる方式だ。

 ただしこうした既存の有名サイトも、激しい集客合戦に苦戦している。その隙間に食い込めるかどうかも、アイデア次第と言える。

 

なお浸透/末端も多様化

 米国に大きく離されている日本だが、情報化の進展が将来の経済成長を左右するとあって、環境整備に向けた社会の関心は強い。

 実際、金融ビッグバンの規制緩和の中で、株式のネット取引も急増。オンライン専門証券会社が、破竹の進撃を続けている。

 また、携帯電話「iモード」の爆発的なヒットに見られるように、端末も多様化の傾向にある。

 普通のテレビをネットに接続させる装置を作っているパソコンメーカー「シーズコーポレーション」(本社=四日市)の辛根成社長(32)は、「手軽な端末があれば、より幅広い人がネットに加われる」と話す。ビジネスの見込みとしては、「まずは音楽や映像ソフトのデータ配信、金融サービスの利用が増えるかもしれません」。

 日本のEC市場規模は、3〜5年後には10倍になるとの試算もある。現状では既存サイトのアイデアは常識的な範囲だが、今後は奇想天外な発想を武器に、一気にサクセスする企業が出てくるかもしれない。(金賢記者)