99年度焼肉店経営集中講座/東條伸一氏の講演から(上)
「良いサービス」の形とは/店のアクションを検証・改善
1999年度朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座の第1回講座(10月19〜20日)で行われた、東條伸一氏の講演「お客をファンにする接客サービス向上法」の要旨は次のとおり。
ヒト技術
飲食業とは、本質的には「飲食+サービス」業だ。貧しい時代には食べ物を提供するだけで良かったが、今は心が満たされて初めて、お客は満足を感じる。そういう満足を追求できるかどうかで、勝負が決まる。
持つべき技術も変わった。
単に食べものを提供していた時代には、良い食材で美味しい料理を作ること、すなわち商品に関わる「モノ技術」が重視された。今はトータルな評価を受けるために、サービスに関わる「ヒト技術」の重要性が増した。とくに、調理師出身の経営者も、多店舗展開するようになれば、料理を他人に任せることになる。常に良いものを提供するにも、従業員との関係における「ヒト技術」が大事だ。
接点
「サービスが良い」と評価されるには、何が必要か。「もてなしの心、ハート」と答える人が少なくない。大事な考え方だが、それだけでは具体的な改善策は見出だせない。
サービスは、従業員の行動や動作などのアクションだ。「サービスが良い」というのは、従業員のアクションの積み重ねに対する評価だ。グラスの持ち方、立っている時の姿勢、従業員の笑顔も、顔の筋肉のアクションだ。
サービスを良くするとは、お客から見て好ましいアクションを追求することだ。
改善すべきアクションとは、店とお客の接点の上にある。
第1に、お客と従業員の接点だ。メニュー説明、オーダー、料理提供、レジでの送りだしなど、数十回に及ぶ接点がある。
次にお客と商品との接点だ。これは、入り口のサンプルケースを見た時から始まっている。メニュー表に親切な商品説明があれば、お客にとって良い接点と言える。ビールの泡や食器のセンス、盛り付け、食べた時の歯応え、喉ごし、後味などがここに入る。
そして設備との接点。トイレや床の清潔さなどは、店の印象に関わる。
お客はこれら一つひとつを評価し、採点している。接点を観察し、問題点を見極められなければ、サービスの改善は望めない。
教育・訓練
改善策を考えたら、次は訓練だ。
とくに、従業員が注文を聞くということは、セールス活動の一環でもある。勧めた品を、お客に気分良く、自然に注文させるには、まさに「技」が必要だ。それなのに、店の中で一番商品を知らない人(バイトなど)がオーダーを取っていないか。商品説明力を向上させてこそ、客単価も上がる。
従業員教育では、新人に一度教えただけではだめ。プロは、トレーニングをしてこそプロだ。草野球と、甲子園に行ったチームとでは練習が違う。商品説明などの訓練は、繰り返し行うべきだ。練習の際にも、棒読みや「口パク」を防ぐために、一人ひとりに復唱させる。
教育する側の課題は、漠然とした「良いアクション」のイメージを、いかに具体的に表現して伝えるかだ。
スタッフには考えながら仕事をすることを求めたい。店長の指図に従っているのと、学んでいるのとは同じではない。教えることと命令することは違うのだ。監督が細かく指図する野球より、選手らが状況判断してゲームを作るサッカーのようなチーム造りを心掛けたい。