心と体をリフレッシュ――夫妻でトレッキング
計画、実行、整理/山は3回楽しめる
毎年夏には長めの休暇を取り百名山を中心に縦走することにしている。
今夏は天候にも恵まれて、北アルプスを満喫することができた。昨年、地震で断念せざるを得なかった表銀座コース(燕岳から槍ケ岳の縦走)を歩きたかったのと、雲ノ平にも行ってみたかったので、欲張って両方を歩いた。
予備日(温泉入浴日)を1日入れて予定を立てた。初日は合戦屋根を登りつめ、北燕岳付近まで往復して町営大天荘まで。槍ケ岳をはじめとする北アルプスの山々を眺めながらの縦走である。
翌日、喜作新道を経て、いよいよ東鎌尾根に入ると、切り立った尾根に緊張する。昨年の地震で落ちた梯子は新しく架けられ、崩れた道も整備されている。槍ケ岳山頂からは、歩いてきた山並みが眺望できた。次の日は、槍岳山荘から上高地にいったん下りて、平湯温泉に泊まった。
しきりなおしに翌日ただちに新穂高温泉から鏡平へ、そして雲ノ平、太郎兵衛平、折立へと縦走した。高山植物と山の展望、そして黒部川源流部などは忘れ難い。とくに鏡平の池を前にして見た、絵に描いたような槍ケ岳と穂高連峰の姿には、ほーっと声を上げたくなる。
双六で泊まるより鏡平でゆっくりした方が良い、と槍岳山荘で一緒になった人に言われ、予定を変更したわけだが、合点がいった。
森林浴で心のやすらぎを覚え、アドレナリンの放出でいつも以上の力を発揮し、またβ−エンドルフィンの作用で高揚感を得たりするのだろうか。何はともあれ、自然の中で味わう充足感は何ものにも代えがたい。
薬師岳を往復して折立に下山し、相乗りのタクシーに乗り込めば、もう日常の世界である。北アルプス中央部の山々は、忘れ難く心に刻まれた。
山行計画は、数ヵ月から半年前にはたてることにしている。妻が交通手段、宿泊先を、夫が登山コースを考える。この期間が楽しい。あれこれの山々を考えているうちに、まず行った気になる。
また山行計画についての会話は、われわれ夫婦の潤滑油になっている。それぞれの仕事に疲れたときも、山行きのプランを考えると少しは楽になる。枕元には山関係の本や時刻表や登山マップが並ぶ。
下山後は、写真などを整理しながら、歩いてきた山々や高山植物、人との出会いを思い出したりすると、おのずと気持ちが豊かになる。よく言われるように、山歩きは3度楽しめる。(朴宗彬・大学教員、韓希望・医師 神戸市在住 月に1回掲載予定)