そこが知りたいQ&A/朝鮮の今年の農業は?
十分ではないが好転の兆し/効を奏す農業構造の改善
Q 食糧不足が続いていると言われる朝鮮ですが、今年の農業はどうだったのでしょうか?
A 10月5〜6日、平壌で開かれた内閣全員会議拡大会議は年末までの課題の一つとして、「豊作となった今年の農業を立派に締めくくり、来年の準備を急ぐこと」を示しました(朝鮮最高人民会議常任委員会、内閣機関紙の民主朝鮮8日付)。
また白南淳外相は同6日、中国共産党機関紙人民日報との会見で「2毛作の拡大と土地整理事業の強力な推進により、食べる問題を解決する展望が開かれつつある」と述べ、10月半ばに訪朝した国連機関の関係者との会見で李河燮農業相は、今年の穀物生産が前年比15〜20%増となる見通しだと語っています。
11月3〜4日に開かれた「第2の千里馬大進軍先駆者大会」で報告した洪成南総理は、「農業構造が改善され、穀物生産をはるかに増やすことのできる展望が開かれた」とも述べています。
一方、10月下旬、平安南道文徳郡立石協同農場の管理委員長は本紙記者の取材に、「今年のコメは悪くない出来」「1995年以降、たび重なる洪水と高潮の被害で収穫は毎年下降線を描いていたが、昨年から少しずつ回復し始めた。今年は80年代半ばの水準まで行けそうだ」と答えました。
Q コメの収穫もそろそろ終わった頃だと思うのですが、実際の収穫量はどうだったのですか?
A 朝鮮ではこの10年間、総生産量を公表しておらず、今年も今のところ発表はありません。ただし、先にあげた閣僚らの話から、好転の兆しを見せているのは間違いないでしょう。
そんな中、国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)が8日、朝鮮の食糧生産に関する特別報告書を発表しました。10月9〜19日の現地調査にもとづいて作成された報告書は、朝鮮で今年生産された食糧が347万2000トンだと推計しています。
この数字は、同じく国連の推計による昨年の生産量348万トンとほぼ変わりません。仮に昨年と横ばいだとしても、大きく見れば、最低だった大水害翌年の96年(200万トン余り、国連推計)より、年々少しずつ回復しているのは事実です。
Q 農業が好転しつつある要因は何ですか?
A 洪総理は3〜4日の先駆者大会で、2毛作とジャガイモ栽培で活路を開いたと強調しましたが、朝鮮では大水害以来ここ数年間、農業の改善に全力を注いできました。
この間、国連機関をはじめ国際的な協力も得ながら積み重ねてきた経験を集大成したのが現行の農業政策です。そこには、適地適作、適期適作の原則による生産構造の改善とジャガイモの増産、2毛作の推進と品種改良、土地整理事業の大々的な推進と農業の総合的機械化の完成、草食の家畜を大々的に育てることなどが含まれています。
土地整理、2毛作、畜産などにおける今年の成果は、国連機関も認めるところです。2毛作による小麦、大麦、豆類の生産は基本的に成功しており、ヤギ、ウサギなどの頭数も大幅に増えているといいます。在日同胞が各地に寄贈し続けている複合微生物肥料工場も力を発揮している模様です。
もちろん、こうした成果を生んだのは朝鮮人民自身の努力であり、それを支えたのは官民を問わず世界各国からの支援です。国連ベースでの支援に限っても、昨年11月〜今年9月の各種食糧支援の総量は84万トンに上りました。
Q 今年の生産量で今後1年間、食糧は足りるのですか?
A 上向きとは言え、まだ十分ではありません。FAO・WFPの報告書は今後1年間の食糧必要量を476万5000トンと推計し、不足分は129万3000トンだと割り出しました。そのうち、朝鮮が商業ベースで輸入する予定の30万トンを引いた99万3000トンの支援が必要だとし、各国に協力を呼びかけています。
こうした支援を受けながら、朝鮮人民は農業を立て直すための努力を来年以降も続けていくでしょう。その意味で、食問題解決への「展望」を口にした洪総理や白外相の発言は心強いものです。
一方、WFPは来年から2年間、朝鮮水害対策委員会と共同で、新たに長期的な農村再建復旧計画に着手します。FAOなども支援し、協同農場員など32万2223人の労力を投入して灌漑施設や堤防の復旧、造林、養苗、種子の確保などの事業を行う予定で、予算は、労働者に供給する食糧込みで3363万2000ドルです。