えこのみっくナビゲーター/「2000年問題」対策、大丈夫ですか?
ミレニアム(千年紀)の変わり目、西暦2000年代突入まで、あと1ヵ月余り。コンピューターが誤作動を起こす恐れがある「2000年問題」が、いよいよ現実味を帯びてきた。先月末には日本政府が、食料の備蓄など市民生活における11項目の「留意事項」を発表し、一般家庭に「地震災害時と同程度の備え」を呼びかけた。備えあれば憂いなし、私たちも身の回りをチェックして必要最低限の対策を立て、何が起きても冷静に対処する心構えが必要だ。「暮らしの中の2000年問題」を見た。
万全の備えと冷静な対処を/せめてこれだけは準備!
食料と水を十分に備蓄
パソコンデータは保存
預貯金まめにチェック
海外旅行も事前調査を
2000年問題は、パソコンを持っている、持っていないにかかわらず、日常生活に様々な影響を及ぼす可能性を秘めている。それでは、私たちはこれにどう対処すれば良いのか。
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最大の不安は、水道、電気、ガスなどの供給がストップする「ライフラインの寸断」。念のため、2、3日分の食料と飲料水、燃料などを備蓄しておくこと。救急箱や懐中電灯、ラジオ、乾電池なども、使用期限などこまめにチェックする。洗面やトイレ用に、風呂には貯水をしておこう。
ファクス、ビデオなど日付表示のある機器の誤作動は、自分で修正するかメーカーに相談する。冷蔵庫や洗濯機などの「白モノ家電」は、停電しない限り心配ない。パソコンのデータは事前にバックアップを。
携帯電話の普及で、緊急時につながらないなどの影響が懸念される電話については、急用以外は可能な限り使用を避けた方が良い。
現金自動預払機(ATM)はどのみち年末年始は利用できないが、オンラインの誤作動で預貯金データが飛ぶ危険性がある。万が一を考え、持ち合わせに余裕を持たせておいたほうが良い。こまめな記帳、振込などの取引内容や残高のチェック、領収書の十分な管理も重要だ。
海外旅行に行く場合、2000年問題への対応レベルが国によって異なるため、渡航先の2000年問題対策が十分かどうかなど、現地の最新情報を旅行会社などでキャッチしておく。旅行傷害保険が2000年問題をカバーしているかのチェックも必要だ。
飛行機の運行については、国際民間航空機関(ICAO)が、年をまたぐ時間帯の運行停止や航路制限などの対策を取っており、日本の旅行各社もこれに追随している。
電車運行についてJR・私鉄各社は、自動列車停止装置(ATS―P)など、保安機器の安全性は確認済みとしながら、万が一に備え、年をまたぐ時間帯に最寄り駅に停車させるなどの慎重策を取っている。
ハイテク社会の「落とし子」/カーナビですでに誤作動も
2000年問題とは、西暦2000年1月1日午前零時、コンピューターシステムに誤作動が発生する問題のこと。「YEAR」(年)の「Y」と「2」、千で区切る単位に用いられる「KILO」の「K」を組み合わせた、「Y2K」の略語も使われている。
原因は、コンピューターの処理能力が低かった時代、データ量を節約するために西暦の上二ケタ「19」を省略し、下二ケタで管理してきたことにある。
1999年から2000年に変わる際、データ上の表記は「99」から「00」となり、コンピューターはこれを「1900」と認識する。年が戻るという、あり得ない現象が起きることで、思いがけない誤作動が発生する可能性が出てくるのだ。
実際、8月22日には早くも「プレ2000年問題」とも言える事態が発生した。カーナビゲーションシステムなど、全地球測位システム(GPS)を利用した機器が、同日午前九時、誤作動を起こしたのだ。
GPSは、人工衛星から送られる信号を使って自らの位置を割り出すシステム。この信号のうち、週単位の時間情報は80年1月6日にスタートして1024週で第1週に戻る仕組みになっており、日本時間の8月22日午前9時がこのリセットの日時に当たっていた。リセットの瞬間、数万台のカーナビが停止する事態が起こった。
人命に関わる状況には陥らなかったものの、前もって予測できていたにもかかわらず対応が遅れたことなどから、カーナビを扱う各メーカーには2000件以上もの苦情の問い合わせが殺到。この事故を機に、2000年問題への関心は急速に高まりを見せた。
これだけコンピューターが生活に浸透した「コンピューター依存」の現代、2000年問題によって起こり得る事態は深刻と言える。2000年問題はまさに、ハイテク社会の「落とし子」なのである。(柳成根記者)