21世紀の経営探る/99年度焼肉店経営集中講座の討論から


 東京で、10月と11月の全4日間にわたって行われた1999年度朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座。経営コンサルタントの講演や繁盛店見学では、経営コンセプト、個性の明確化が今後いっそう必要になることが強調された。同胞経営者が出演した最終日のパネルディスカッション「21世紀型朝鮮料理店経営を探る」では、時代の転換点に立った経営の難しさとともに、それを乗り切るノウハウについて突っ込んだ話し合いが行われた。その一部を紹介する。

パネリスト 郭功八氏 57歳、北海道「松竹園」 1店舗
  朴徳根氏 45歳、岩手県「やまなか屋」 9店舗
  権一氏 40歳、群馬県「朝鮮飯店」 20店舗
  金海里氏 47歳、埼玉県「伽倻の家」 3店舗
  李康浩氏 46歳、岡山県「焼肉処東風」 2店舗
司会 金奉讚氏 44歳、茨城県「みらくてい」 3店舗

 

 金奉讚(奉) 不況、競争激化の中でどんな手を打って来たか。

 金海里(海) ライバル店はペア客を半額にするなど強力な販促を打っており、とても競合できない。そこで、うちのコンセプトである「民族色」を前面に出して朝鮮の祭日や風習をイベント化し、朝鮮のお菓子や民芸品をサービスで出している。売上に対する効果は分らないが、お客様には楽しんで頂いている。

 奉 うちもクリスマスに手作りのプチケーキをサービスしている。お年寄りの夫婦など、大きなケーキを買わない人に受けている。焼肉店でクリスマスは一風変わっているが、日本人のお客様はイベント好きなので喜ばれる。

 郭功八(郭) 朝鮮の食の美、伝統を追求するスタンスを守りながら、メニューの見直しを行っている。独創性を大事にし、うちの店ならではのものを出している。そうした意識を持つ上で、このセミナーに参加したことが大きな転換点になった。新しい情報、知識、ノウハウを吸収し、すぐに実践する姿勢が大事だ。

 李康浩(李) 宣伝、情報発信に力を入れている。最近では携帯電話の「iモード」でうちの店を検索できるようにした。今月25日から来年の1月末まで、うちの店を検索したお客様にはビールをサービスする。これまでにも、若者に対してはEメールを飛ばして宣伝している。ほかにはヘビーユーザー専用のカードを用意し、相応のサービスを還元している。

 奉 安売り店の続出で、低価格路線を取るべきか悩むことも多いのでは。

 権一(権) 値下げとともに、商品価値を高める努力をしている。原価率の良い商品を開発したり、利用していなかった部位を商品化して、全体の採算に余裕を作る。その余力をより良い食材の仕入れに当て、お客様に還元している。

 朴徳根(朴) 値下げのために原価の安い肉を求めて仕入れルートを変えたことがある。当初は品質に不安があったので、原産地まで行って飼育状態、精肉工場の衛生管理なども納得するまで徹底的に見てきた。

 奉 今後の焼肉店はどうあるべきか。

 権 本来は朝鮮料理店でありながら、焼肉に傾き過ぎていた。お客様の絶対的なニーズが焼肉にあったのも確かだが、今後、個性を出していくことを考えれば野菜料理やスープ類の見直しが必要だ。お客様の利用動機に幅が出るし、食事に「楽しさ」を演出できる。

 李 2店舗経営しているが、固定客も年齢が高まるにつれて肉を食べる量は減るだろう。一方は現状通り焼肉をメインにしつつ、片方は家庭料理などを充実させる方向で考えている。

 郭 手間のかかる家庭料理や創作料理が大事になってくる。提供方法や盛り付けにも工夫が必要だ。だから、とくに個店経営の場合は料理に対する考え方がきちんと出来ていないと厳しくなってくる。

 海 提供方法の工夫も、朝鮮料理を良く知っていてこそできる。例えばサムゲタンは、日本で言えば「土用のうなぎ」のようなものだが、それを知ったのは最近だ。知って、作って、売る。この姿勢で行きたい。

 朴 有名な盛岡冷麺も最初は売れず、努力を重ねてここまで育った。ああいう商品が一つ出れば強い。容易ではないが、不断に開発に努めていくべきだ。もともと、この商売を始めたのは朝鮮人として誇りを持って生きていくため。それを忘れずに行きたい。