在日同胞の「脳死・臓器移植」意識/医協が初のアンケート調査
在日同胞の約50%が、脳死を認めていることが、在日本朝鮮人医学協会(医協)が最近、実施した在日同胞に対する「脳死・臓器移植」に関する初めてのアンケート調査によって明らかになった。また54.9%が「他の人に自分の臓器を提供する意志」があり、44.6%が他の人から「可能な限り臓器提供を受けたい」と思っている。その反面、31.5%が臓器移植で一番不安なのは「移植を受ける患者が公正に選ばれるか疑問だ」としている。この結果は28日、京都で開かれる第22回医協学術報告会で発表される。
3400余人が回答
50%が「脳死は人の死」
「臓器提供意思あり」55%
移植患者選定に「不安感」32%
アンケートの質問項目は大きく分けて、(1)「人の死」について(2)移植臓器の提供を受ける意志(3)自分の臓器の提供意志(4)臓器移植で一番不安に思うことについて(5)祭祀(チェサ)をしているかどうかについて。
従来は「人の死」を心臓が停止した場合に限っていたが、最近は人工呼吸器で心臓が動いていても、脳の働きがすべて止まって回復しない状態(脳死)で「人の死」を認めるとの考え方が出ている。
(1)の「『人の死』をどう思いますか」の問いに、約50%が「脳死を認める」で、「心臓停止に限るべきだ」は21%。医療人は脳死を認める人の割合が多く、一般同胞は心臓死の割合が多かったが、その差はわずかだ(表1参照)。
(表1)「人の死」について
医療人 | 一般同胞 | 計 | % | |
脳死を認める | 123 | 1594 | 1717 | 50.1 |
心臓停止に限るべきだ | 40 | 700 | 740 | 21.6 |
どちらでも良いと思う | 22 | 278 | 300 | 8.8 |
わからない | 35 | 447 | 482 | 14.1 |
その他 | 9 | 178 | 187 | 5.4 |
229 | 3197 | 3426 |
(3)の「臓器提供の意志」については、54.9%が「意志がある」と回答、「提供したくない」は19.8%だった(表2参照)。
(表2)自分の臓器を提供する意思について
医療人 | 一般同胞 | 計 | % | |
提供する意思がある | 136 | 1746 | 1882 | 54.9 |
臓器提供をしたくない | 76 | 599 | 675 | 19.8 |
わからない | 12 | 815 | 827 | 24.1 |
その他 | 5 | 37 | 42 | 1.2 |
229 | 3197 | 3426 |
(4)の「脳死の人からの臓器移植について、一番不安に思うこと」(一つだけ選択)は、31.5%が「移植を受ける患者が公正に選ばれているか疑問だ」とし、29.2%が「脳死判定自体に疑問が残る」、12.2%が「臓器売買される恐れがある」と答えた。
(2)の「他の人から移植のための臓器提供をしてもらいたいか」の問いに、44.6%が「可能な限り提供を受けたい」と答え、「受けたくない」は23.6%だった。「その時になってみないと分からない」は29.9%だった。
(5)の「祭祀(チェサ)」については、「昔通りに行っている」が42.8%で、「簡略化して行っている」は45.7%で、計88.5%がチェサをしていた。回答者のかなりの人達が朝鮮文化をある程度意識した人たちといえよう。
一方、日本の世論調査と比較してみると、(3)の「臓器提供意志」について日本医療情報センターが4月に実施した調査では、49%がイエス。医協の調査より5.9%低い。また読売新聞が5月に実施した調査では、49%がイエスで、12.9%がノー。医協の調査よりも6.9%低い。
また(4)の臓器移植の不安点では、日本医療情報センター調査の「臓器提供を受ける患者の選定について、公正に行われたと思いますか?」との問いに、34%の人がノーだった。
つまり公正に選定されなかったと考えているようだ。医協の調査結果も同じような割合で、この問題に不信感を持っているようだ。
【調査方法】調査期間=9月初〜10月初。実施方法=医協をはじめ総聯各本部や各団体を通じて行い、本人筆記。回答数=在日同胞医療従事者229人、一般同胞3197人、計3426人。
一般同胞の参加呼びかけ
医協学術報告会で発表
医協では一般の在日同胞にも報告会への参加を呼び掛けている(参加費無料)。「脳死・臓器移植」のシンポジウム構成は以下の通り。
1、「脳死・臓器移植に関する在日同胞へのアンケート調査の結果と分析」(高錫健・健仁外科医院)。
2、「在日同胞の死生観を探る」(金英一・はなぶさ診療所)
3、「『脳死・臓器移植』の光と影」(文武英・文整骨院)
4、「脳死はひとの死か? この問いのあいまいさ」(品川哲彦・関西大学文学部助教授 哲学倫理学)
このほかに、学校保健、「兵庫県同胞の介護保険に関するアンケート調査のまとめ」、「第一回国内外同胞平壌医学討論会に参加して」などが行われる
問合わせ=医協中央。TEL 03−3814−5754