朝鮮学校の新カリキュラム作り始まる/2003年度実施へ


 2003年度実施を目途にした朝鮮学校の新カリキュラム・教科書作りが10月末からスタートした。今回の改訂は9月21日に開かれた総聯中央委員会第18期第3回会議で正式に決定されたもので、教育内容をより同胞の志向と日本の実情に合わせようというものだ。解放直後から50余年間、朝鮮学校では自らの手で自主的なカリキュラム、教科書を作成してきた。

 

同胞のニーズに合わせて/「週5日制」にらむ

 朝鮮学校では、傘下の教科書・学習用図書出版社である学友書房の教科書編さん部員、朝鮮大学校教員、実際に教える朝鮮各級学校の教員らが共に、カリキュラム策定と教科書編さん作業を一緒に行う。つまり、現場の意見、ニーズがダイレクトに反映されるのが特徴だ。

 60年代には63〜64年度、70年代には74〜77年度、80年代には83〜85年度にかけてカリキュラム・教科書の改訂が行われた。現行のカリキュラム・教科書は、93〜95年度にかけて大幅にリニューアルされたものだ。

 また、全国規模や地方ブロックごとに毎年行われる教育研究大会に、現役の教員らと共に上記のメンバーらが参加。そこで発表された現場の意見を、教員用の指導書や学習参考書、問題集作りに取り入れ、次の改訂に向けた参考にする。

 今回の改訂方針は97年末に公表された。98年1月の中央教育研究大会ではその方針を受け、93年度から実施された現行カリキュラムを総括する作業が行われた。

 そして、現場からの意見収集などを経て99年10月30日、上記のメンバーらによる教科書編さん委員会が新たに発足し、各分科別に本格的な議論がスタートした。「よりいっそう同胞たちの志向と日本の実情に合わせる」とされた今回の改訂のポイントは、日本学校で実施される「完全学校5日制」との兼ね合いだ。さらに世界各国で進む教育改革も念頭に置き、「同胞たちの信頼と支持をもっと得られる民族教育に発展させる」ことを目標にしている。




日本学校(1条校)の場合

 日本学校(1条校)の場合、カリキュラムは文部省が告示する学習指導要領によって定められる。教科書はこれに沿って教科書会社が作成し、文部省の検定を経て、市町村教育委員会や採択地区(同一教科書の使用が適当だとされる一定の地域)、各学校ごとに選定される。教科書を使う主体である子どもたちのニーズよりも、指導要領の解釈権を握り教科書検定を行う文部省、より多く選定されようと営業活動に必死な教科書会社の意向などに左右される側面もある。

 2002年度から実施される新学習指導要領は、文相の諮問機関、中央教育審議会が2002年度からの学校週5日制を打ち出したことを受け、教育課程審議会が議論したうえで策定された。「ゆとりの中で、自ら学び考える力を育成する」ことを柱に◇既存教科の枠を超えた「総合的な学習」の時間を新設◇各教科の内容を現在の7割程度に厳選し基礎学力の定着を図る――などが特徴だ。

 各教科書会社はこれに沿って教科書を編集した後、文部省の検定を受ける。新学習指導要領に従う新教科書の検定は12月、小学校用と一部中学校用教科書から始まる。(韓東賢記者)

 

これまでの歩み/自力で作成、時代に応じて発展

◆47年〜

 ※47年の朝聯第9回中央委員会で「教育理念」「教育規定」制定
 ※国語、歴史地理など民族科目重視
 「1、全人民がよく生活できる真正な民主主義を教えよう。2、世界史の観点に立つ愛国心を育てよう。3、実生活に土台をおく芸術鑑賞と創作活動を独創的に発揮させよう。4、労働の神聖さを日常生活と学習を通じて体得させよう。5、科学技術に対する精力的な探究心に火を点そう。6、科学・労働・経済現象の社会連関性を究明させよう」(朝聯の「教育理念」)
 「帰国を前提にして国語習得を中心にした過去の教育から、根本的に検討・改正し、恒久的で合理的な教育方針に」(同「教育規定」前文より)

◆55年〜60年代

 ※55年に総聯結成
 ※63〜64年度にカリキュラム改訂
 ※共和国の海外公民としての主体性を全面に
 「思想的には高尚な国際主義的愛国思想をもって武装させ、生活面においては自覚的な規律と民主的な道徳を確立させ、学識面においては読・書・算を中心とする基礎学力を向上させる」(55年5月の総聯結成大会で採択された活動方針より)
 「1、国語を中心とした学力を向上させること。2、愛国主義教養を高めること。3、教育と労働を結合させること」(50年代当時の民族教育における3大目標)
 「共和国の教育政策に則り、日本の社会条件に適した民族教育を行う」(「在日朝鮮公民の民主主義的民族教育問題」在日朝鮮人民族教育対策委員会、66年)

◆70〜80年代

 ※74〜77年度、83〜85年度にカリキュラム改訂
 ※共和国と連携しながらも時代の変化に即して日本の実情に合った現実的な内容に
 「民族教育の内容は主体性、科学性、現実性を十分に考慮して構成されており、この方向にしたがってカリキュラムと教科書が作成されている」「現行のカリキュラム(83年度から実施)は、民族教育の目的を確実に遂行することに基本を置きながらも、各国の教育の先進的な内容、とくに日本の現実を考慮し、独自に編成されている」(ブックレット「朝鮮総聯」、91年)
 「民族教育が目指す理想的な人間像は、民族的な自主性が確立され、祖国と日本および国際社会の各分野で十分活躍できる創造的能力を兼ね備えた朝鮮人である。民族教育の現行カリキュラムはこのような理想的人間像を具現するものとなっている」(「真の朝・日親善を目指す民族教育」金徳龍・朝鮮大学校助教授=当時、89年)

◆90年代

 ※93〜95年度にカリキュラム全面改訂
 ※21世紀を展望し、より今の子供たちの特質、同胞父母らのニーズに合わせた内容に。国際化時代の在日同胞像を念頭に、社会科目、言語科目(朝日英)などをとくに強化
 「科目の配列と内容、編成において民族的主体性の原則を堅持しながら、在日朝鮮人子女の実情に合うよう改編した」(「民族教育だより」93年9月)
 「どのような人材を育てるのかという点で従来と異なる点は、時代が発展し、在日朝鮮人運動が発展する中で、創造的に社会に対応し、適応していく人材をどう育てるのか、という創造性の問題です。また国際化という時、民族的な主体性が確立しないままの国際化などありえません。世界についての幅広い知識と判断力を持つように育てることです。この2つの側面をすべての科目に反映させました」(学友書房の宋都憲副社長、94年のインタビュー)