当世外食事情/押野見喜八郎氏講演(1)変わる客層


 激しい競争のさ中にある外食市場。お客に支持され、生き残るためには何が必要なのか。19〜20日に行われた、99年度朝鮮料理(焼肉)店経営セミナー(商工連飲食業者協議会主催)での押野見喜八郎氏の講演「お客を魅了するメニュー開発の方法」(要旨)に、ヒントを求めた。

 

ちょっと、飽きられてませんか

 外食市場は今、お客さんが入れ替わってる過渡期にあると思うんです。クライアントの飲食店が、私の勧めに沿ってメニューを変えても、なかなか効果が上がらない。反応がないんです。

 よく考えてみたら、私もどんどん年を取っている。とうとう50の大台に乗りました。

 日本の外食市場で一番大きなマーケットボリュームを持っているのは、1946年から49年までの間に生まれた団塊の世代です。

 日本の外食が発展した背景には、この世代がいる。外食市場の成長といっしょに、この世代が大きな消費をしてきたんです。

 百花繚乱(りょうらん)のごとき外食店は、この世代が育てて来たと言ってもいいのではないでしょうか。

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 ところが、その世代がもうすでに50代。嗜(し)好も変わってます。

 昔の50代と違って、今の50代は肉を食べますよ。しかし、日本人は40歳を過ぎると和風好み、あっさり傾向が確実に出てくる。肉は好きだけど、食べる量は変わる。好みも、昔はカルビをたくさん食べたのが、赤身のいい肉があればそれでいいという風に変ってくる。洋食系よりも和食系のお店にいく機会がどんどん増えて行く。そうやって卒業して行ってしまうんです。

 今までと同じ客数を稼ぐためには、どうにかして新しいお客を獲得しなければならない。新しくこの市場に入ってくるお客をつかまなければ、ジリ貧になる恐れだってあるんです。

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 今、新しいお客が市場に入って来ています。前の世代と、ジワジワ入れ替わってる。

 外食市場で最もパワーがあるのは、若者と女性だと言われている。しかも、少しずつ年代が下がってきてます。

 そういう人達は、昔と比べて外食についてうるさい。経験抱負なんです。

 昔は外食をすることなどほとんどなく、たまのぜい沢に過ぎなかった。ところが今の子供は、赤ん坊の頃から親がファミレスなどに連れ回してます。外食という行為そのものがポピュラーになって来てる。

 若者は皆、バイトをして自分のお金を稼ぎ、外食などで自由に使っている。日本人は年間1600万人が海外に出て、そして本場の料理を経験してくる。昔と違って、お客が食のプロ、言い方を変えればすれっからしなんです。

 10年1日のように同じことをやっている飲食店が、そういう厳しいお客の評価に耐え得るかどうか。

 いかがです? ちょっと飽きられてませんか。

おしのみ・きはちろう

 1946年生れ。高校卒業後、東京ヒルトンホテル(現キャピトル東急ホテル)入社を機に、飲食業界に入る。その後、サントリースクール、日本喫茶学院講師を経て、小熊経営研究所で飲食店の経営指導に従事。メニュー開発に定評があり、現在はFSプランニング代表として、不二屋、カゴメ、ハウス食品工業など、多数の大手企業の契約顧問として活躍中。