同胞障害者家族のネットワーク「ムジゲ会」の集いに参加して


 同胞障害者家族のネットワーク「ムジゲ(虹)会」主催の講演会「共に生きる社会をめざして」が11月27日、東京・上野の朝鮮商工会館で催された。自らも障害を持つ講師が「障害は不幸ではない。ただ不便なだけだ」と語り、障害者と健常者が手を取り合う大切さを訴えた。同胞社会にも残る障害者への差別や偏見。この見えない「壁」を崩すカギが、1人1人の「心の改革」にあることを、参加者は強く実感していた。

 

講師の申し出で実現

 ムジゲ会は、障害児を持つ同胞の親たちの親ぼくと交流を深めようと、1995年10月に発足した。会員は全国に41人。月1度の定例会と隔月の会報発行を欠かさず、ピクニックや交流会も盛んだ。

 今回の集いは、今年3月の懇談会「子供たちのミレ(未来)のために」に次いで2回目。群馬県立身体障害者リハビリテーションセンターの職員で、自らも四股と言語に障害を持つ福祉教育アドバイザー、妹尾信孝さん(48)のたっての要望で実現した。

 各地の学校で講演活動を行っている妹尾さんは、昨年10月の群馬朝鮮初中級学校での講演を機に、今年3月には同校生徒がリハビリセンターで体験学習を行うなど、交流を続けている。懇談会に関する記事でムジゲ会の存在を知った妹尾さんから講演の申し出があり、在日本朝鮮民主女性同盟、在日本朝鮮人医学協会、在日本朝鮮人人権協会の後援で開催に至った。

 

共に生きる大切さ

 講演で自らの生い立ちを語った妹尾さんは、両親や先生、友達など周りの人たちの支えがあったからこそ、今の自分があり、この出会いが福祉に従事するきっかけになったと語った。

 「常に相手の立場に立って考えることが大切。自分と相手の共通点を見つけ、譲り合う。共に生きるとはそういうことなんです」、「朝鮮人も日本人も、様々な国の人たちが手をつなげる社会を作っていく。心に障害を持ってはだめですよ」。一言一言が参加者の心を打つ。ある女性は「朝鮮人として差別とたたかいながら、自分には障害者への差別意識があった。恥ずかしく思う」と、涙交じりに語った。

 新聞の告知を見て訪れたという、北区在住の義眼職人、水島二三郎さん(60)は「障害のあるなしはもちろん、民族や人種が違っても同じ人間。それを差別する人の心の狭さに情けなさを感じます」。朝大研究院で音楽療法を学ぶ成基香さん(20)も「同胞障害者は民族差別と障害者差別を受ける『二重弱者』の立場にある。彼らのためにできることを探し、少しでも福祉に貢献したい」と語る。

 

「起爆剤になりたい」

 「ムジゲ会の目的は障害者に対する同胞の理解を求めていくことで、日本社会との関わりは重要視しなかった。でも今回、新聞に告知も出し、実際にこれだけ参加者が来たのを見て、メディアの力の大きさを改めて実感しました」。ムジゲ会会長の申桃順さん(36)は、今後は数年に一度、全国規模で会員が集まれる場を持ちたいと語る。

 妹尾さんは、幼稚園や小学校に入る際に「前例がない」として難色を示された。朝鮮学校も同様で、障害者を受け入れる態勢が十分に整っておらず、認識も不十分なのが現状だ。

 だからこそ、「『民族教育+障害者教育』という環境を整え、同胞障害児に対する『壁』をなくしたい」と、申さんは強調する。

 「その起爆剤に、私たちがなります」(柳成根記者)

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 問い合わせは、ムジゲ会(TEL 03・5616・9686)、妹尾信孝さん(TEL 0279・24・3999)まで。