「北東アジアの平和と日朝国交交渉」/日本の学者、市民がシンポ
社民党の村山富市元首相を団長とする超党派の国会議員訪朝団が出発するのに先立って、日本の学者市民らが11月26日、「北東アジアの平和と日朝国交交渉」と題するシンポジウムを東京都の主婦会館で催した。和田春樹東大名誉教授の司会のもと、小牧輝夫アジア経済研究所主幹、毛里和子早稲田大学教授、木宮正史東大助教授、隅谷三喜男東大名誉教授がパネリストとして出演し、政府レベルの対話が東北アジアの平和に貢献すること、会談を後押しする世論の形勢などが指摘された。
今夏にも対話促す声明
シンポを主催した「日朝関係を憂慮する学者市民の会」は今夏、「ミサイル発射」騒動で「北朝鮮脅威論」が頂点に達した時に声明を発表し、日本政府に国交交渉の再開を呼び掛けたことがある。対話のチャンネルを持てば、両国に横たわる不必要な緊張が解けるとの認識からだ。
そうした趣旨に基づいて開かれた今回のシンポでは訪朝団を機に、政府レベルの交渉が再開されるべきとしながら、その必要性や問題点が論じられた。
毛里氏は、「約1世紀におよぶ両国の異常な敵対関係」や、朝鮮や中国の「脅威」を前提にした、日本の安全保障の在り方を変えるためにも「東アジアの安全保障を考えるうえで、プラスになっていない日朝関係を透明化させ、新しい関係を構築すべきだ」と述べた。
小牧氏は「日朝間には解決の難しい懸案が存在するが、原則問題を解決しなければ前に進めない」と強調。8月10日に朝鮮政府が日本政府に対して植民地支配に対する謝罪と補償を求めた声明に言及しながら、(1)日本による植民地支配の清算(2)北東アジアの平和への寄与―など国交交渉を進めるうえで、2つの原則が守られるべきと指摘した。
アジアでの日本の役割
92年に日朝交渉が中断した理由については、「『北朝鮮は得体の知れない国』というイメージが日本を覆い、交渉を後押しする世論がなかったから」(木宮氏)「日本から見た日朝国交正常化問題が何かが、市民に十分に伝えられておらず」(小牧氏)「米国に追随し、日本独自の外交政策をもっていないから」(参加者)―などが挙げられた。
シンポでクローズアップされたのは、朝鮮半島や北東アジアの平和のために日本が独自の役割を果たせるし、日朝交渉は「その要」になるとの視点だ。
毛里氏は、「米国にとっての朝鮮と日本にとっての朝鮮は違う。戦争によって大きな惨禍を被ったアジアで新しい信頼関係を作りだすためには、日本に対するアジアの国々の猜疑心を取り払うことが大事」と述べたが、小牧氏は、そのためには「交流を拡大するしかない。国交があった方が交流を拡大できる」と語った。
正しい朝鮮認識を
ようやく動き出した対話の糸口をさらに広くするには、国交交渉を求める「世論」や政府を後押しする「市民の声」が不可欠だ。
シンポでは、関係改善に対する世論の無関心や、朝鮮の実情が正確に伝えられていない問題点が指摘される一方、克服のための道筋が模索された。
9月中旬、67人の日本市民らによる「日本と朝鮮をつなぐ女性のピースライン訪朝団」を組んで、朝鮮を訪問した日本婦人会議の小川ルミ子事務局長は「過去の歴史を清算するためにも、朝鮮の市民とどう向き合うかを考えるべきだ。我々はあまりにも実情を知らない。朝鮮の人たちがどう生きているのかを、ありのままに知らせていくことが大事だ」と語った。
今年の10月に訪朝した隅谷氏は、朝鮮における農業生産量や自然災害のデータを紹介しながら「国連機関が詳しい数字を出しているが、日本国内にはなかなか伝わらない。朝鮮が置かれた状況を客観的に把握し、暖かい心と理解を持って対応することが必要」と訴えた。
司会を努めた和田氏は、「対話で力を発揮しよう」とスポーツ交流などを提起しながら、日本が朝鮮に対して多様なアプローチ、視角、見方を持って向き合っていくことを呼びかけた。(張慧純記者)