生活時間/オモニの1日


「トングラミ通信」発行人の1人 金癸任さん

双子との蜜月の時間ゆったりと

 名古屋市内に住む双子の紗瑛ちゃんと梨瑛ちゃんは、生後6ヵ月。アボジ李裕全(38)、オモニ金癸任(36)さん夫妻の待望の女の子だ。初級部4年の昌史君(9)と二年の哲史君(7)がいて、日だまりのような温かな家族の中で元気に育っている。

 癸任さんの朝は早い。午前2時の授乳の後、一眠り。5時30分に起きて授乳とおむつ替え、朝食の支度、子供たちの弁当作りを流れ作業のようにこなす。子供2人が7時半に登校、夫の出勤は8時過ぎ。「朝、一息つけるのは、8時半頃。母乳で育てているので、御飯をしっかり食べています」

 とは言っても自分のことは後回し。3時間毎の授乳の合間に済ますことは山ほどある。容量8キロの洗濯機を1日2度まわし、干し、取り込む。さらに、アトピーの長男のために、卵と牛乳を抑えた手作りおやつも欠かさない。

 「7年ぶりの赤ちゃんで、いっぺんに2人。前の育児は忘れていたので、最初は戸惑いました。でも、無条件に可愛くて…。双子との『蜜月の時間』を過ごせて幸せです」

 双子の午睡は午後1時頃から。哲史君が帰宅する3時には、目覚めてオッパとキャッキャッと声をあげて遊ぶ。その間、生協の宅配を受け取ったり、夕食の準備にとりかかる。

 夕七時頃から子供たちの食事、8時頃帰宅する夫と夕食を囲んだ後、双子はアボジと次々と入浴。「心身ともにリフレッシュできる、夫の至福の時間です」と癸任さん。子供たちの就寝は10時頃。「その後また洗濯して、翌朝の弁当の下ごしらえをして、1人の時間ができるのは真夜中の零時頃。新聞に目を通したり、本を読んだりできるのは、この時間帯ですね」。

 癸任さんは独身時代、東春朝鮮初中の幼稚園の先生だった。地元で育ち、友人らの信望もあつい。

 「今は専業主婦なので、『社会に参加したい』『何かしなくては』という心理的な願望にとらわれる時もある」と言う。3年前からは、地域で若いオモニたちを結ぶ「トングラミ通信」を発行している。

 「子育ての中で孤立し、ストレスから体を壊す女性もいるでしょう。女性は家族や社会的な助けが進まないとゆとりを持てない。この通信はその一助になればと思っています」

 子育て中の「様々な悩みを分かちあえるホッとできる場所がほしい」という地域の声も根強い。それに応えて、「総聯の支部などが、若いオモニたちがオープンに出入りできる、心の拠り所のようなセンターになってほしい」と切実に願っている。

 

画家 池貞淑さん

暮らしから生まれるヒラメキ

 月刊「イオ」の人気漫画「チョンスギのよりみちアワー」の作者。生活の濃やかな描写とそこから生まれるおかしさ。何とも言えない味を醸し出して、読者の圧倒的な支持を受けている。

 東京都・板橋区に住む池貞淑さん(32)。画家、イラストレーター、漫画家と多彩な才能の持ち主だ。

 1日で最も慌ただしいのは、家族が出かけるまでの時間。東京朝鮮中高級学校中級部・美術教員で夫の高石典(37)さん、東京朝鮮第3初級学校3年の英載君(9)と保育園に通う英舜君(3)を6時30分に起こし、朝御飯、支度を次々に済ませ、夫と長男を7時30分に家から送り出す。次男は8時30分に保育園に連れていく。

 それからが、池さんの「勝負の時間」。掃除、洗濯も、時には、する時間がないほど、月何本かの連載の締切りに追われることも。

 「必死に絵を書いていると、下の子から『オンマ、遊んでていいね』と羨ましそうに言われた。子供たちの目には、そう映るようです」と微笑む。

 「チョンスギ…」のヒントは、炊事や買い物、子供と遊んだり、ふとんの中でウトウトしている時など、突然ひらめく。

 「だから、忘れないように家中にメモ帳を置いています。もちろん、夫や子供の言葉やしぐさから着想することもあるが漫画はあくまでフィクションなんです」。

 夕方は4時30分に保育園にお迎え。長男も5時前後に帰宅する。まず、宿題をみて、簡単なおやつを食べさせて、おふろに入れる。夕飯は夫が帰宅した8時頃から。締切りに追われている日は、「料理にこだわりを持つ」夫が台所に立ってくれる。

 連載の他に、突発的な仕事を頼まれる時には徹夜も。仕事の幅を広げるため半年間、パソコン教室にも通った。「やりたいことは、我慢できない性分」と照れる。

 豊かな感性と鋭い観察力が生み出す「チョンスギ…」の、2000年の世界が楽しみだ。

 

ひとこと/ホッとできる場を

 「オモニの生活時間」を取材すると、現代の女性の生き方が浮き彫りにされる。仕事、育児、家事に加えて、介護の問題などがズッシリと女性の肩にのしかかっている。それらのストレスを上手に解消できるかどうかは、夫や家族とどう関わっているかにも影響があるようだ。今夏、名古屋市内で開かれた日本心理学会での研究発表によると、「子育て中の母親には、時々、プライベートな時間や場が必要」であり、「夫が育児に理解があり、ねぎらいの言葉をかけてくれる」「二人だけの時間を作ってくれる」など「夫の心理的支えが大切」だとの指摘がなされた。同胞女性の生活にも、この指摘はあてはまると思う。誰しも特定の役割から離れて、寛いだり、ホッとしたり、雑談したりという時間と場がなければ、正常な感覚でいることは難しい。その「場」を同胞社会でいい形で確保してあげることが大事だと、痛切に感じた。 (朴日粉記者)