「百萬人の身世打鈴」刊行/日本の非道あぶり出す証言集


 日本の敗戦からすでに54年。日本が引き起こした侵略戦争の犠牲者はアジア全域で2000万人を超える。しかし、今、日本が朝鮮で、アジアで何をしたか、という問い掛けは、この国では空しく響く。反動らが息を吹き返し、歴史を改ざんし、人々の記憶を抹殺しようと試みている。

 そんな中、刊行された本書は、植民地時代、朝鮮全土から、連行され、苦難を強いられた人々の人生と、魂の声を紡いだ証言集であり、「朝鮮で日本は何をしたか」に応える告発の書である。

 本書に網羅された証言者は109人。聞き書きをする上で心掛けたのは、「心の内面に深く分け入って、感情の震えや、生活環境、日本へ渡った動機や、連行された状況などを、よりつぶさに、正確に聞き取り、風土や生活習慣をも含めて取材する」(前田憲二監督)姿勢だった。冷静に時間をかけてじっくり証言を聞きだす、という作業が行われた。その結果、炙り出されたのは、この一世紀にわたる日本の非道と朝鮮の人々の苦難の歩みである。

 本書は「強制連行・強制労働」の決定版を作成したいという編集者らの熱い思いを込めて、7年前に制作委員会を発足させた。そして、山田昭次、琴秉洞両氏ら近現代史の学者らにもよびかけ、指導を受け、共に侃々諤々、結果的には60回の制作委員会、20回の編集委員会、計80回の会議と足掛け7年の歳月をかけて、証言取材を行なった。

 「身体を張って、己の足で得た」証言からは、決して教科書や歴史では、教わることのできない「日本の犯罪行為」が浮き彫りにされている。その意味でこの「証言集」は、被害者たちの魂の声によって醸し出された、貴重な記録である。(定価=5800円+税、東方出版、大阪市天王寺区大道1―8―15、TEL 06・6779・9571)