それぞれの四季/万寿寺で
李政愛(リ・ジョンエ、西東京朝鮮第2初中 教員)
京都、奈良への修学旅行を終えて帰って来た。紅葉にはまだ少し早かったが、国宝や重要文化財が目白押しのその地で、大伽藍や仏像などを精力的に見て回った。睡眠時間が、二晩で3時間などという猛者たちもいて、夢うつつの3日間だった。
帰ってから1日置いての教室で「私の修学旅行ベストワン」を書かせたところ、一番多かったのは、万寿寺と金閣寺だった。万寿寺は、朝鮮のスニム(お坊さん)のいらっしゃる小さなお寺だ。万寿寺を一番に選ぶなんて、うちのクラスの感受性もなかなかだなぁと、1人喜んでいたのだが、他の朝鮮学校でも万寿寺は筆頭に上がるそうだ。
初めての座禅体験で緊張した面持ちの生徒たちを前に、スニムはおっしゃった。
「少年団というのは何をするもんや?
少年団というのは、良いことをするためのもんなんや。自分のためやない。他人のため、ナラのためにな。ナは土、ラは水のこと。花に水をやるんも、家族にあったかいおつゆをこしらえるんもみな同じ。良いことをしなさいよ。自分がそうしたことを誰にも誰にも知られんように良いことをしなさいよ」
座禅を終えた私たちを本堂にのびのびと寝ころばせ、スニムは静かに続けた。
「お寺は学ぶ所、そして、心についたほこりをほかしていく所。沢山ほかして行きや…」と。
突然、涙があふれた。こらえようとしても止まらなかった。あれは何だったのだろう。清々しさ、安心して心を寄せられる心地良さ、心に響いたウリマル。暖かい大事なものを万寿寺からもらったような気がする。