教えて 生活と権利/日本国籍の離脱
Q 帰化したが、外国人登録をして父母の国籍に戻れますか
A 朝鮮表示を望むなら共和国法で請願を
Q 私は、在日同胞を父母として生まれ、10年前に父母と共に日本に帰化しましたが、外国人登録を行ったうえで、父母の元の国籍に戻したいと思います。どうすればいいですか。
A 「韓国国籍」法によると、日本に帰化し、日本国籍を取得した時点で「韓国国籍」を自動的に失います(旧「韓国国籍」法12条4号、「韓国国籍」法15条1項)。
共和国国籍法には、「韓国国籍」法のように外国国籍を進んで取得しても共和国国籍法を失う旨の規定はありませんが、外国人との間で出生した子の国籍は父母の意思、つまり父母の選択によって決めるということを基本としています。
本問であなたは両親とともに日本に帰化しているので、両親はあなたの共和国国籍を選択しなかったものと考えられます。
すると、あなたは日本に帰化した時点では、日本国籍以外もっていないことになります。
外国人登録を行うには、日本国籍を離脱しなければなりません。
日本国籍法上、日本国籍を離脱するためには日本ではない外国の国籍をもっていることが必要です(日本国籍法13条1項)。
本件では、日本以外の国籍をもっていないので、請願(共和国国籍法12条)や国籍回復制度(「韓国国籍」法9条)により、共和国国籍か「韓国国籍」を取得して、それを証明する方法によるしかありません。
この場合、外国人登録の表示は共和国国籍法に従って取得すれば「朝鮮」表示になるのが原則ですので、「朝鮮」表示を望むのであれば、共和国国籍法に基づく請願によるべきです。
ただ、日本政府は、日本国籍法11条及び、13条1項にいう「外国」とは日本国が承認している国をいい、共和国の国籍がたとえあっても、それは法的には存在しないものとして扱っています。
従って、日本政府の見解によれば、請願によって共和国国籍を取得したとしても日本国籍を離脱(喪失)できず、外国人登録を行うことはできません。
日本政府のこの見解は、ある国の国籍があるかどうかを決めるのはその国の国籍法によるという大原則に反するものですが、かりにこの原則に従った場合、共和国国籍があることの証明ができれば、日本国籍の離脱はできることになるでしょう。
「国籍」に関するQ&Aを終えて
一連の設問に対する回答について、反響が少なからずありました。とくに、在日同胞が日本の外国人登録上の表示にかかわりなく、いずれも、「共和国国籍」と「韓国国籍」を二重に持っているという点についてです。
法律家には、両国籍を持っているということは理解できても、そうでない同胞には、実感がなくピントこないということだと思いますが、私はむしろそういう感覚こそが大切だと思います。
たとえば「朝鮮」表示の在日は、両国籍を持っているのに、なぜ、ほとんどの「朝鮮」表示の在日が両国のパスポートを持っていないのか。なぜ両国籍を持っていると言いながら、一般的に「朝鮮」表示の同胞が海外で自分を証明する手段が、日本政府の発行する再入国許可証なのか。むしろ、そういう感覚こそ在日の実態に則したものです。
こういう素朴な疑問については、法律家の立場から言えば、一応の回答は用意できますが、しかし、観念的に両国籍を持っているということと、実際の在日同胞が国籍についてもっている感覚のズレを埋めることはできません。
最終的には、観念的な国籍と実態とのズレを根本的に解決するしかないのです。
それは法律家の役割を越えたものです。(高英毅)