春夏秋冬


 「今回の合意内容を実践に移し、実を結んだ後に、もう一度、訪れたい」――日本の政党代表団団長として訪朝した村山富市元首相が、平壌で本社記者とのインタビューで語った言葉である。さらに、「2000年を朝鮮の国民の皆さんとともに笑顔で迎えたい」とも心情を吐露した

 ▼今度こそ、朝・日関係を正常化させたいとの並々ならぬ決意の表明と受け取った。その反面、今度こそは文書をただの「紙切れ」にしてほしくない、朝鮮民族の積年の思いをすっきりと晴らせてほしいと、村山元首相を初めとする各政党の代表たちに願わざるを得ない

 ▼90年9月、朝鮮労働党、自民、社会(当時)3党共同宣言が発表され、その後、予備交渉を経て91年1月から本交渉、そして朝鮮労働党代表団の訪日と続いた

 ▼当時、同胞のどの集まりに顔を出しても、みな表情は晴れ晴れとしていた。「国交が樹立される」ことへの大きな期待感と、そしてそれ以上に、自分たちを取り巻く環境が「確実に改善される」ことへの素直な喜びからだった

 ▼しかし、期待は裏切られた。国交正常化交渉は2年も続かずに中断された。日本の不法な植民地支配に対する謝罪と補償という、交渉のテーマとは異次元の「ら致疑惑」を日本が持ち出したからだ

 ▼なぜ、テーマから目をそらそうとするのだろうか。人は何か後ろめたさがあると、そうした行為に走ると、ある心理学者が話していたがその類いのものなのか。「不言実行」。過去の追及がいまも止まないヨーロッパや米国。朝鮮民族のみならず、みなが日本の行動を見守っている。(彦)