みんなの健康Q&A/消化器(1)胃ガン


ガンの中でもっとも多い病気、定期検診が重要/多量の食塩、喫煙、飲酒が発生率高める

今池南クリニック 南洋二院長

  消化器内科とは、どんな病気を診るのでしょうか。

  人が食べ物を摂取し、消化・吸収を営み、便として排泄される過程で胃、大腸、肝臓、すい臓など、様々な臓器がそれぞれの役割を果たしています。それらの臓器の異常を発見し、診断・治療するのが消化器内科の医療です。

  臓器が多いだけに、病気の種類や発生頻度はともに多いのではないでしょうか。

  そのとおりです。悪性腫瘍(ガン)の死亡率をみても、消化器系の悪性腫瘍の死亡率は、全悪性腫瘍の50%以上を占めています。

  胃ガンの症状、原因などについて説明して下さい。

  ガン組織が粘膜層または粘膜下層までにとどまるものを早期ガンと言い、ガン組織がそれより深く広がったものを進行ガンと言います。胃の粘膜には知覚神経がないため、早期ガンでは自覚症状はほとんどありませんが、胃が重い、胃が痛い、胃が張ったような感じがするなどの症状を訴える患者さんもいます。

 進行ガンになると貧血、体重減少、食べ物が飲み込みにくいなどの症状が現れてきます。胃ガンは日本人に非常に多い病気で、死亡者数は年間45000人以上で、ガンのなかで男女とももっとも多いです。その原因として多量の食塩摂取が挙げられています。また喫煙、飲酒も胃ガンの発生率を高めると言われます。

  検査および診断について話して下さい。

  胃の早期ガンは自覚症状がはっきりしないので、早期ガンの段階で病変を発見するには定期検診を受けることが何よりも重要です。

 一般的な定期検診は、従来はバリウム検査を行い、異常を疑われた場合に内視鏡検査が行われてきましたが、最近では最初から内視鏡検査が行われることが多くなっています。内視鏡検査でガンを疑う異常所見を見付けたら、その一部の組織を取り出し、顕微鏡でガン組織、ガン細胞の有無を調べます。胃ガンと診断されたら、ガン病変の範囲、深さを精密に診断するため、色素内視鏡検査や内視鏡的超音波検査などが併用されます。

 胃ガンの5年生存率は粘膜内の病変では100%、粘膜下層の病変でも95%以上であり、進行ガンでは5年生存率はぐんと低くなります。

 このことからも、早期ガンの段階で発見されることが大切であり、定期検診の重要性を強調したいと思います。

  治療について、最近の傾向も含めて話して下さい。

  胃ガンの治療は、外科的切除手術、内視鏡的治療、化学療法、免疫療法などがありますが、基本は手術で胃を切除する外科的治療です。

 手術では病変部を含む胃の切除と、リンパ節の郭清(掃除)が行われますが、長年の手術成績より、リンパ節転移を認めないような病変については、胃を大きく切除しなくてもガン組織を取り除くだけで治療は十分です。このような病変には、内視鏡で見ながらガン病変にワイヤーをかけて電流を通じて切除する、内視鏡的粘膜切除術が、最近では積極的に行われるようになっています。高齢者や重い合併症があり、手術困難な場合は、内視鏡療法、化学療法、免疫療法などを組み合わせた治療も行われています。(3回連載。名古屋市千種区今池1―28―12、TEL 052・733・1515)