ニュースの眼/民主労総の合法化
南朝鮮の「全国民主労働組合総連盟」(民主労総、段炳浩委員長)が11月23日、南朝鮮当局によって合法労組として承認された。「人間の尊厳と平等を保障する真の民主社会を建設する」(綱領)ことを目的にした民主労総の合法化は、今後の南朝鮮民主化運動に大きな影響を与えるだろう。
労働者の政治参与に拍車/60万人が加盟、無視できぬ存在
95年11月に結成された民主労総は、これまで5回にわたって当局に設立申告書を提出した。しかし、南朝鮮当局はその都度、非合法労組が加盟しているなど些細な理由を挙げて申告書を差し戻していた。
それが今回、承認に踏み切ったのは(1)もはや民主労総を非合法組織として無視できなくなり(2)民主労総が長官の更迭を含む労働行政の改革を求めて全面闘争を表明し(3)国際自由労連(ICFTU)や経済協力開発機構労働組合諸問委員会(OECD TUAS)など国際的な圧力があったからだ。
今年7月現在、民主労総には1226の労組と。57万3490人のの労働者が加盟しており、96年の労働法改悪反対闘争では、累計で154万人の労働者を動員した実績がある。だから金大中「政権」は非合法組織であるにもかかわらず、民主労総を労使政委員会(労組、会社、政府の3者による協議会)の1員として認めざるを得なかった。
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民主労総の合法化によって期待されるのは、労働者の政治勢力化と零細企業労働者の組織化だ。5人、最低でも1人か2人の候補者を当選させられるだけの力量を備えているといわれている。民主労働党の「国会」進出は、労働者の声が政治に反映されることを意味する。
おりしも憲法裁判所は11月25日、労組の政治資金寄付を禁止した現行労働法の第12条5項が「憲法に違反している」との決定を下した。これによって民主労総は、民主労働党の後援団体として正式に後援金が出せるようになった。
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民主労総合法化によるもう1つの期待は、零細企業労働者の組織化。
南朝鮮でもっとも過酷な労働を強いられているのは、零細企業労働者だ。しかし、彼らが苦労して労働組合を作っても民主労総が法外組織というレッテルを貼られていた間、零細企業労組は、民主労総に加盟することができず、また加盟しても非合法組織だとして会社側から労組として認められず、弾圧された例も少なくない。
さらに民主労総の合法化は、唯一の合法組織だった「韓国労働者総連合」(労総)の変化を促す結果をもたらすだろう。労総は、その企業よりの姿勢からこれまで御用労組と非難されてきたが、民主労総が結成されて以来、戦闘的になったと言われている。
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クーデターで「政権」を奪取した全斗煥「政府」は87年4月、「大統領間接選挙制」を維持するために護憲措置を発表し、一切の改憲論議を封じた。ちょうど安企部による朴鍾哲・ソウル大学生拷問殺人事件隠蔽(いんぺい)工作が発覚したこともあって「大統領直接選挙制」と民主化を要求する市民運動が一気に高まった。これが6月抗争と呼ばれるもので、市民、学生とともに労働者が運動の中心で活躍した。
当時、南朝鮮では複数労組と労組の政治参与が禁止され、労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権=争議権)が著しく踏みにじられていた。直選制の獲得にとどまらず労働者は、6月抗争を契機に、労働者の諸権利を獲得するために民主労組結成へと運動を継承・発展させていった。これが民主労総誕生の契機となった。 (元英哲記者)
民主労総の綱領(要旨)
(1) 自主的で民主的な労働組合運動の歴史と伝統を継承し、人間の尊厳と平等を保障する真の民主社会を建設する
(2) 労働者の政治勢力化を実現し、諸民主勢力との連帯を強化し、民族の自主性と健康な民族文化を確立し、民主的諸権利を勝 ち取り、祖国の平和的統一を実現する
(3) 未組織労働者の組織化など組織力量を拡大・強化し、産業別共同交渉、共同闘争体制を確立し、産業別労働組合を建設し、労働組合運動を統一する
(4) 権力と資本の弾圧と統制を封鎖し、労働基本権を完全に勝ち取り、共同決定に基づく経営参加を拡大し、労働現場の非民主的要素をなくす
(5) 生活賃金確保、雇用安定保障、労働時間短縮、産業災害追放、母性保護拡大など労働条件を改善し、男女平等の実現などすべての差別を撤廃し、安全で快適な労働環境を勝ち取る
(6) 独占資本に対する規制を強化し、中小企業と農業を保護し、社会保障、住宅、教育、医療、税制、財政、物価、金融、土地、環境、交通などと関連した制度を改革する
(7)
全世界の労働者と連帯し、国際労働運動力量を強化し、人権を尊重し、戦争と核兵器の脅威に反対して恒久的な世界平和を実現する。