中国・中央民族大学/王錫宏助教授に聞く


 華僑として平壌で生まれ、自らもマイノリティとしての経験を持ち、現在、少数民族の文化、教育を研究している北京の中央民族大学の王錫宏助教授が10日、東京・小平市にある朝鮮大学校を訪れ、教職員、学生たちと交流、歓談した。中国の民族教育研究者として、日本における在日朝鮮人の教育、権利の状況を、中国の現状と比較しながら、どのように見ているのかについて聞いた。

すばらしい民族心の堅持、勧めたい他国の同胞との交流

 ――在日朝鮮人問題に関心を持ったのは、

 まず、自分の生い立ちに起因している。私は平壌で生まれ、市内の平壌第一華僑小学校で幼少の頃学んだ。平壌は大変美しい街で、出生地でもあるが、当時私は、中国人、漢民族であることを自然に意識していた。その後、自らの体験からマイノリティに強く興味を持ち、とくに朝鮮族には特別な感情を抱くようになった。

 大学では言語文学部を選択し、朝鮮語を学んだ。私以外クラス全員が朝鮮族だった。そこで、中国以外の国にも朝鮮人がいることを知り、とくに在日朝鮮人が初等から大学までの系統的な教育機関を持っていることを知って、是非研究したいと思った。

 ――どのように研究を深めていったのか。

 8年前、九州大学を訪問した際、その地方に朝鮮学校があることを知った。その後、在日朝鮮人の民族教育に関する著書を読み、知識を得ていった。日本でどのように民族心を堅持しているのか実際見てみようと、在日朝鮮人が多く在住する大阪の生野区や市内の朝鮮学校を訪ねた。そして教育だけでなく、生活様式にいたるまで文化を発展させていることに大変興味を持った。また今日、朝鮮大学校を訪問して、在日朝鮮人は海外に在住している朝鮮民族の中で、もっともすばらしい財産を築いていると感じた。

 ――中国の朝鮮族と在日朝鮮人の共通点、違いについてどう思うか。

 民族性が大変強いということが共通点としてあげられる。しかし在日朝鮮人は、日本社会で抑圧と差別にさらされ、それを跳ね返してきた。そこに、在日朝鮮人の強さがある。だが、在日朝鮮人は祖国同様、分断を強いられている。これは力の分散にもなり、非常にマイナスだ。

 日本政府との関係では、過去、植民地支配をした側とされた側の関係にある。これは決定的に、中国の朝鮮族と違う点だ。

 ――日本の大学で在日朝鮮人問題について議論を深め、研究論文も発表しているが。

 日本の色々な大学の教授と議論し、論文も発表した。私は、在日朝鮮人は、ほかの外国人とは別で、特別、特殊な問題として扱うべきだと発言してきた。なぜなら、歴史的に見ても、彼らは自らが選択して日本を在住の地として選んだわけではないからだ。日本が起こした戦争、植民地支配がなければ、在日朝鮮人問題は存在していない。責任がどこにあるかは明白だ。

 しかし、日本は他民族を認め、異文化を理解しにくい土壌にある。

 国際社会の流れは多文化主義の方向にある。これは国連の指導理論でもある。

 日本社会が単一民族社会という考えを強調するより、朝鮮学校などの民族文化教育を尊重することが、日本社会を豊かにすると考えれば、国際化へのアピールにもなるはずだ。

 ――中国の朝鮮族を研究されてきた立場から、在日朝鮮人問題について、アドバイスできることがあれば。

 まず、在日朝鮮人が1つになること。そして、中国、米国、カナダなど海外に在住する朝鮮族と積極的に交流していくことを勧めたい。

 1つは経済的交流、文化訪問、そして朝鮮半島の問題で共同研究し、意識を統一することだ。そして朝鮮民族が、どのような役割を果たせるのか多いに議論すべきだ。

 今後も内面を充実させながら、日本国民と各国民族との交流と友好を深め、自分たちの存在をアピールしていくことが大切だ。  (金美嶺記者)

わん・そくほん
 1951年平壌市生まれ。16歳まで平壌で過ごす。中国・中央民族大学助教授で早稲田大学教育研究科客員研究員。中国未来教育研究会理事、少数民族教育研究センター主任で中国科学技術協会の雑誌「未来と発展」の特別執筆者でもある。