ECONOMIC NAVIGATOR/インターネット楽しむには十分


格安パソコンは買いか?/コスト削減によるデメリットも

 「インターネットで朝鮮学校のホームページを見たい」「電子メールで友達とのネットワークを広げたい」「仕事に活用できれば」など、同胞がパソコンを始める動機は様々だろう。「欲しいけど、安い買い物じゃないし…」という悩みも今は昔の話。インターネットや電子メールの人気に引っ張られ、パソコンは一般にも広く普及し、出荷台数の爆発的な伸びと相反して小売価格は下がり続けている。こうしたブームをけん引するのが、話題の「10万円パソコン」などの格安パソコンだ。しかし、コストパフォーマンスに優れる格安パソコンには、安い分、リスクもまた確実に存在する。ビギナーにとって、格安パソコンは本当に「買い」なのだろうか。

「10万円未満」なぜ実現?/

CPU低価格化が機に-大手参入も市場けん引き

 パソコン市場は依然、好調だ。日本電子工業振興協会の調べによると、今年上半期の日本国内へのパソコン出荷台数は、前年同期比34%増、半期単位では過去最高の伸びとなる439万1000台。総出荷金額は同24%増の1兆1106億円にも上った。来年度には出荷台数1008万台、総出荷金額は1兆8100億円にまで達すると、同協会は予測する。

 市場活況の最大の要因は、従来の購買層である企業やビジネスマンに加え、一般家庭でも「1家に1台」の家電感覚で求めるようになったことだ。インターネットや電子メールの爆発的なブームが、その背景にある。パソコンは今や、生活になくてはならないものとして定着しつつあるのだ。

 そこで、各メーカーでは一般層を捉えようと、手の届きやすい価格設定を始めた。これが、数年前までは20万円、30万円が標準相場だったパソコンの店頭小売価格に大きな変化をもたらした。格安パソコンはこうした流れの中で生まれたのである。

 一般的には、本体とキーボードにディスプレイが付いて10万〜15万円程度のものが「格安」と定義されているが、ここでは10万円を切ったものを「格安」と見ることにする。10万円未満のパソコンの日本国内でのシェアは、今年4〜6月期で3,5%(データクエスト調べ)。少ないように思えるが、同年1〜3月期は0,1%だったから、実に35倍増という驚異的な伸びを見せている。

 格安パソコンはこれまで「安かろう、悪かろう」という粗製濫造のイメージが根強かった。だが、価格競争によるCPU(中央演算処理装置)の低価格化や、グラフィック機能を内蔵した統合チップセットの登場、徹底したコスト削減などにより、安いながらも十分なスペックを備えたものが目立ってきた。

 デザインをめぐって、大ヒット商品「iMac」の米マッキントッシュ社との訴訟騒ぎにまで発展した、「台風の目」ソーテックをはじめとする新興メーカーに加え、IBMやNEC、富士通といった大手企業も続々参入し、一気に「格安パソコン市場」を形成。消費者にとっても見過ごせないものとなっている。

選ぶ際のポイントは?/

目的に合うか十分吟味を-拡張機能の有無に注意

 こうした格安パソコンは、これから買う人にとって、本当に「買い」なのか。格安パソコンのメリットとデメリットから見る。

 メリットはもちろん、その価格。それでいて、上位機種に比べて性能もある程度そん色ない。

 パソコンの主な用途は今や、一昔前のような表計算やワープロからインターネットに移ったと言っても過言ではない。インターネットをしたくてパソコンを買う人は、高い機能や余分な付属ソフトは重要ではなく、したがって高いパソコンは必要ない。

 その点、格安パソコンなら、モデム搭載やメモリが標準で64MBというのも一般化しており、インターネットを楽しむ分には申し分ない。不必要な機能が付かない分、価格に還元されているので、お買い得感を感じるわけだ。

 だが、格安パソコンには、安いがゆえのリスクもまた存在する。

 格安パソコンはコスト削減が徹底されている。そのため、例えば拡張機能が省略されている、マニュアル本がない、アプリケーションソフトが不十分、ディスプレイやスピーカーの品質がワンランク低いなど、コスト削減のしわ寄せが見られる。格安パソコンにビギナーへの「親切さ」を求めるのは厳しいだろう。

 とくに、パソコンを使い続けるうちに、足りない機能を補いたくなった場合、拡張スロットの数や、メモリの増設が可能かといったことが大きな問題となる。購入の際には、拡張機能が十分に整っているかを調べる必要がある。

 また、不必要なソフトが付かない分、必要になったソフトを買い足さなければならず、各種ソフトが標準装備された上位機種よりもトータルで高く付いてしまうこともあり得るので、注意が必要だ。

 結論を言うと、ヘビーユーザーならともかく、ビギナーにとっては格安パソコンは選択肢の1つになり得るが、同時に相応のデメリットも内包されていることは覚えておいたほうが良い。安いからと安易に手を出すのではなく、カタログや専門誌、詳しい友人や店員の話などを参考にし、十分に下調べをしたうえで、格安パソコンが本当に自分の目的と志向に合うのかを吟味することが必要だ。