在日朝鮮学生学科別研究討論会/「朝鮮語スピーチコンテスト」


ウリマルへの熱い思い/

 「母国語は民族の誇り。私たちは日本にいるけど、朝鮮民族としての誇りがある。だから、ウリマル(朝鮮語)を守りたいんです」――。日本の大学に通う留学同所属の学生と朝鮮大学校の学生による、恒例の在日朝鮮学生学科別研究討論会(11〜12日)。44回目の今回、目玉は初の試みである「朝鮮語スピーチコンテスト」だ。「民族心を養うには母国語の習得から」との趣旨から企画され、朝大生に混じって留学同からも大勢が参加した。たどたどしい覚えたてのウリマルながら、しかし堂々と、朝鮮人として生きる喜びを語っていた。


熱弁に沸く会場 

 最長16年間の民族教育を受けてきた朝大生と、学んで1年未満が大半を占める留学同の学生を競わせるのには無理がある。そこで留学同は、朝大生とともに講堂で行う「初級」と、別枠の留学同のコンテストに出る「基礎級」「中級」に参加者を振り分けた。

 講堂でのコンテストに出たのは、留学同から2人、朝大生4人。同じ学校や学部の学生が出るたびに「がんばれ!」の声が掛かるなど、会場は終始、大変な盛り上がりを見せた。

 それだけに、出演者のプレッシャーも相当だったようだ。「緊張で声が震えてしまった。客席が見えないようにメガネを外したくらいですよ」と語るのは、ノートルダム清心女子大1年、「美珠さん(19)。「満足度は100%。出来は40%くらい」と苦笑する。

 知人から週1回、ウリマルを習っているという、同志社大4年の李伸也さん(22)も、肝心の大舞台では「あがってしまい、セリフも飛びまくりでした」。

 記念館講堂での「第2部」も、講堂に負けじと会場は熱かった。基礎級に立命館大1年の姜尚美さん(19)、東洋大2年の尹哲さん20)ら3人、中級に3人が参加。「緊張で頭が真っ白になった」(尹さん)、「棒読みではなく、自分の言葉としてどう表現するか悩んだ」(姜さん)と、こちらも苦労は並々ならなかったようだ。


「楽しく学んで」 

 「さんと尹さんは、朝鮮学校(初級部)から日本学校に転入したが、環境の違いから「1年でウリマルが書けなくなり、恥ずかしくなった」(「さん)。慣れないスピーチ、覚えるのは相当きつかったようだ。

 一方、ずっと日本学校の姜さんと李さんが「朝鮮人の自覚」に目覚めたのは、高1の夏。姜さんはこの時から本名を名乗った。李さんはサマースクールが転機になった。今も同胞の友達とはウリマルで話すよう心掛けているという。

 学び始めたきっかけこそ異なるが、共通するのは母国語への愛着だ。「民族文化の最たるものが言葉。ウリマルにしかない独特な表現は多い。言葉を知れば世界も広がります」と李さん。「さんも「『日本に住んでいるからウリマルはいらない』のではなく、日本にいるからこそ、ウリマルを受け継ぎ、伝えていく意味がある」と語る。

 直前まで、習って間もないウリマルでスピーチが成り立つのか半信半疑だった。だが、実際に聞くと、1つの言語をこれほどの短時間に自分のものにできるものかと、流暢な言葉遣いに驚くばかりだった。

 母国語を知らない多くの同世代の人たちに、難しく考えずに楽しく学んでほしいと話す彼ら。「まったく話せない段階から、少し理解できた時の喜びを味わってほしい」(姜さん)というのが、一致した思いのようだった。(柳成根記者)