99年朝鮮半島情勢/朝米関係 記者座談会(2)


南北関係/

多次元交流の始まり-統一競技、経済協力が盛んに

― 民族大団結への流れ

  : 南北関係では今年、祖国統一汎民族連合(汎民連)南側本部代表が初めて汎民族大会に参加したのをはじめ、統一サッカー、統一バスケット競技や統一音楽祭が行われるなど、民間交流が盛んだったが。

  : 南北関係は、当局間対話、経済協力、民間交流の3つに分けて見る必要がある。8月に平壌で行われた統一サッカーは、朝鮮職業総同盟(職総)と「全国民主労働組合総連盟」(民主労総)との間で合意されたもので、これは民間交流に分類することができるが、南朝鮮当局は統一バスケット及び統一音楽祭を経済協力の次元で承認している。これは金大中「政権」が、依然として民間交流を規制していることを証明するものだ。

 事実、南朝鮮当局は汎民連南側本部代表の汎民族大会参加を認めなかったし、ソウルに戻った彼らを「国家保安法」違反で逮捕している。民主労総の統一サッカーを承認したのは、「太陽政策」の宣伝と不許可にした場合の労働者の反発を恐れてのことだが、彼らも南朝鮮当局は色々な口実を付けて取り調べた。

  : 今年の汎民族大会は画期的な意義を持つ。これまでの汎民族大会は南朝鮮当局の妨害のために、学生団体は別にして南北、海外が一堂に会することができなかった。しかし、南側代表が逮捕を覚悟で参加することによって、初めてそれが実現した。

 南朝鮮当局は、汎民連南側本部と「韓国大学総学生会連合」(韓総連)、汎民連南側本部を「保安法」の
「利敵団体」に規定し、弾圧を加えてきた。こうした状況の中で、南朝鮮の民主団体の中には、もはや「韓総連」のような北一辺倒の運動に終止符を打ち、当局と共同で統一運動を進めるべきだという意見が出てきた。

 しかし、南朝鮮最大の在野団体である「民主主義民族統一全国連合」(全国連合)が汎民族大会に代表を派遣することによって、改めて南北、海外が民族的に団結する必要性が再認識された。今後、南朝鮮の統一運動は、民族大団結という方向で、1つにまとまっていくだろう。

― 忍耐示した西海事件

  : 当局間会談の方は、5月に北京で次官級会談が開かれただけだが。

  : 5月と6月の2回、会議が行われた。5月の会議では、南側が20万トンの肥料を提供し、6月に離散家族問題を協議する次官級会談を開催することで合意していた。

 しかし、西海銃撃事件が起きて、南側が態度を一変させた。離散家族問題で目に見える成果があった後に残りの肥料10万トンを送るという「相互主義」を持ち出したのだ。それで会談が決裂した。

  : 西海銃撃事件では、北が一方的にやられたと報道されたが。

  : それは事実と異なる。南側も相当損害を被ったようだ。それから双方の装備の違いもある。北が反撃するとなると、海軍力ではなく、ミサイルや長距離砲を使うことになるだろう。そうなると、単なる衝突では済まなくなる。だから自制した。同時に、米国も南が主張する「北方境界線」なるものは国際的に認められたものではないと公表して事態の沈静化に務めたことも象徴的だ。

― 政治犯送還が焦点

  : 2月に行われた朝鮮政府、政党、団体連合会議が南朝鮮当局に高位級政治会談を提案したことがあったが。

  : 連合会議は、当局間会談の先決実行事項として (1)外勢との共助および合同演習の中止 (2)「国家保安法」の廃止 (3)統一愛国人士の釈放と活動の自由保障を促していたが、南側はこれら一切について行動を起こしていない。

 ただ、「国家保安法」については、金大中「大統領」が8月に改廃を指示した。しかし現在、伝えられている改正の範囲は、字句上の変更で、保安法の根幹は維持されており、それさえも年内の改正は困難な状況にある。

 北を「敵」と規定している保安法は、いかなる場合においても南北統一、和解に反するもので、これを存続させたまま南北関係の好転は望めない。

  : となると、来年も南北対話は期待できないことになるのか。

  : そうとも言い切れない。最近、元非転向長期囚送還問題がまた持ち上がっているが、この問題が解決すれば、対話のめどが付くと思われる。

 


朝・日関係/

8年ぶりに会談再開へ/村山訪朝団が突破口開く

― 水面下の接触

  : 朝・日関係では、なんといっても村山訪朝団につきる。中断されていた朝・日国交正常化会談が8年ぶりに再開にこぎつけたのだから。

  : 村山元首相は当初、個人の資格で訪朝する意向だった。ところが、自民党と外務省が訪朝団に相乗りしようとして話がややこしくなった。いくら個人とはいえ元首相が行くのだから、それなりの「格式」が必要だというわけだ。

 これにはわけがある。昨年8月の人工衛星発射で日本政府は、事実関係を十分に確認しないまま、対朝鮮制裁措置を発表してしまった。後でミサイルではなく、人工衛星だったと分かっても、振り上げた拳をいまさら下ろすわけにはいかず、そのままずるずる引きずっていた。その間、朝・日当局の水面下の接触がニューヨークなどで行われたが、日本側は、けんもほろろに扱われたという。そこへ村山訪朝団の話が持ち上がったので、渡りに船とばかり、相乗りを決めた。

  : 6月に訪朝団の話が立ち消えになったのは、朝鮮側が手みやげに食糧支援を要求したからのようにマスコミは伝えているが。

  : それもあるにはあるが、それが本質的な問題ではない。日本が朝鮮との接触を求めていた3月、外務省幹部は「北朝鮮が本当に経済復興を考えるなら、日本の協力が必要不可欠。そこに必ず接点があるはず」と語っていた。

― 米の圧力が背景に

  : いったんは中止になった村山訪朝団派遣が、11月になって再浮上したのは。

  : 活字にはなっていないが、米国の圧力があったらしい。

 複数の消息筋によると、9月に行われたベルリン朝米会談の後、ワシントンから日本政府に相当な働きかけがあった。

  : クリントン大統領が対朝鮮経済制裁の一部緩和を発表し、ペリー調整官が報告書を公表したことも作用している。朝米が関係改善に向けて進んでいるのに、このままでは日本が置いてきぼりにされるのではないか、という意識も働いたのだろう。中米国交正常化のときのように。

― 今世紀中の解決へ

  : 朝・日国交正常化をうたった朝鮮労働党と自民党、社会党の3党共同宣言(91年)が発表された当時、米国は朝・日修交に反対していた。朝・日会談が中断したのも日本が米国の圧力に屈したからだが、その米国が、今度は逆に朝・日関係を改善しろと言ってきている。日本にとっては朝鮮と国交を樹立する上で大きな障害がなくなったと言えるのではないか。

  : まだ楽観は許されない。今後、日米は核疑惑に替えてミサイル問題で協調態勢を取るだろう。朝鮮を「ミサイル関連技術輸出規制」(MTCR)に加盟させて、長距離ミサイルの開発、配備を中止させようと。

  : 日本側にしてみれば、朝鮮との関係改善なくして政治大国にはなれないという事情がある。いわば朝鮮に対する謝罪と補償は、日本にとって避けて通れない問題だ。

 朝・日双方が、今世紀に起きたことは今世紀中に解決すると表明しているが、日本側が決心すれば、十分に今世紀中に解決できるだろう。