本の紹介/「環境倒産」 井熊 均 著
新たなリスクに備える手引き
環境保全への取り組みの巧拙が即、企業の倒産につながるのだろうか――。
編著者は本の中で、今はまだ、そこまでは言い切れないと断りながらも、「環境面での取り組みを誤れば、結局は企業として危機的な状況になることもあり得るのだから、メッセージ性の強い題名」を敢えて選んだと述べている。
読み進むほどに、その意図が伝わって来る。
例に引かれている石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェル社のエピソードは圧巻だ。環境配慮において「最良の企業市民」とさえ言われた同社は、北海油田の井桁を海洋投棄しようと計画した際に、環境基準を守りながら、これを「危険」と指摘する環境保護団体のパフォーマンスに負けて甚大な損害を出した。
同著は環境をめぐる社会の意識変化にスポットを当てながら、企業がその流れを積極的に生かす術を考えた「環境リスクマネジメント」の手引きだ。 (日刊工業新聞社・232ページ・税別1600円)
◇ いくま・ひとし 1958年生れ。日本総研所属