金剛山歌劇団「心に残る歌」特別講演


民族受難期の20曲を披露

 1900年代に生れ、今も愛され歌い継がれている朝鮮の名曲。玄海灘を涙して渡った在日朝鮮人1世たちの、遠い故郷への愛と郷愁を歌ったなつかしのメロディー。金剛山歌劇団が企画制作した特別公演「心にのこる歌」が15日、新宿文化センターホールで行われた。約千人が観覧した公演では、民族受難期に生まれた歌謡、民謡のうち20曲が披露され、歌を通して在日1世たちが歩んできた激動の歴史を振り返り、在日2世、3世らに民族的な誇りを持って生きることの大切さを訴えた。

遠く離れた故郷を想う

 歌劇団の6人の歌手が、「淋しき旅人」(1930年代、高麗星作詞、李在鎬作曲)を歌う。

 感慨深く耳を傾けていた白大龍さん(78歳、東京)は、「36年に日本に渡って来て、辛い土木労働をした日々を思い出す。解放するまで、苦しみに耐え、力強く生きていこうと友人たちと共に歌ったものだ」と語る。

 27年頃に創作された名曲「荒城の跡」(王平作詞、全寿麟作曲)を洪嶺月さんが歌う。

 洪さんの情感ゆたかな歌声に1世たちは当時を思い、2世らは辛苦を強いられてきた父母たちに思いをはせる。30年代後半にヒットした曲が紹介されると、李末仙さん(75歳、群馬)は、「なつかしい歌ばかりだ。このように、2、3世の歌手たちが伝統を受け継ぎ、歌を披露してくれてとても嬉しい」と、興奮ぎみに語っていた。

 公演では、作曲家・洪蘭波(1897〜1941年)の「船頭の歌」、「鳳仙花」も披露された。

 処女作「鳳仙花」は、在日1世にとって忘れる事の出来ない歌だ。

 歌が始まると、1世を始めとした同胞たちは、遠く離れた故郷を思ってか、目頭を熱くしていた。