学術別研究討論会/「在日同胞の医療と福祉」


社会保障で根強い差別/介護保険-無年金者考慮せず

 朝鮮大学校で11、12の両日、催された在日朝鮮学生第44回学科別研究討論会。その初日のテーマ別セミナーの1つ「在日同胞の医療と福祉」には、200人以上の同胞学生が参加し、福祉への関心の高さをみせていた。

 講師は共和病院(大阪市生野区)の医療ケースワーカー、洪東基さん(39)。同胞患者の良き相談相手として、様々な悩みの解決に取り組んでいる、同胞福祉問題のプロだ。

 洪さんは、同胞高齢者が抱える問題の具体例として、▽核家族化への移行による孤独と不安 ▽貧困により医療費の支払いが困難 ▽保険制度から外され、若い頃に治療が受けられなかったため、現時点では手遅れ――などの点を挙げた。

 また、来春導入の介護保険制度については、年金支給を前提にした制度であり、年金の恩恵を受けられない同胞高齢者の現状に即していないと指摘。「無年金状態の人に、保険料や1割の自己負担をどう支払えというのか。日本語が分からないという言葉の壁もあり、同胞の側に立つと、この制度にはまだまだ問題点が多い」と強調した。

 そして、「同胞高齢者は平等であるべき社会保障において、いまだに差別的な現状にある。これを打破するためにも、私たちが民族権利としての福祉問題に熱心に取り組む必要がある」と訴えた。(柳成根記者)

−参加者の感想−

・ 保育士の資格を取るため、社会福祉の勉強に力を入れている、朝大教育学部保育科2年の金成華さん(19)

 「老人保健施設の『ハーモニー共和』で、高齢者に献身的に接するヘルパーの姿を見て、これこそ私たちに求められているものと感じた。それだけに、同胞高齢者への差別は一日も早くなくなるべきだと思う」

 

・ 障害者施設でのボランティア活動を欠かさず、今討論会でも高齢者福祉をテーマに論文を発表した、同外国語学部3年の金明秀さん(21)

 「1人1人が福祉に関心を持ち、現場で経験を積むことが必要。福祉問題に長けた人材を育成するためにも、朝鮮学校では福祉教育に力を入れてほしい」