みんなの健康Q&A/消化器(3)肝臓ガン
B型、C型肝炎ウィルスが強く関与/定期的にAFP値・超音波検査を
Q 肝臓ガンについて話して下さい。
A 肝臓ガンには、肝細胞ガンと胆管細胞ガンがありますが、ここでは肝細胞ガン(以下、肝臓ガン)の話をします。
肝臓ガンは、大腸ガン、肺ガンと並んで最近、増加傾向にあります。患者年齢分布をみると、大腸ガンなどと比較して若年傾向がみられます。この事からも、後で触れますが、肝炎ウイルスが肝臓ガン発症に関与している事が推測されます。男女比は約5対1で、男性に多いといえます。
肝臓はよく「沈黙の臓器」と言われるように、症状が表れにくいため、自覚症状は肝臓ガンの早期発見には役に立ちません。
Q 肝臓ガンの原因について、特徴的な事も含めて話して下さい。
A 肝臓ガンの患者さんの肝臓の状態をみてみると、約70%以上が肝硬変を併存しており、約20%以上が慢性肝炎や肝線維症を併存しています。
またウイルス、アルコールの問題でみてみますと、患者さんの中で、HCV抗体陽性者が70%以上、HBe抗原陽性者が20%以上でアルコールが単独の原因とみられる者は3%程度と言われています。
この事から、(1)B型、C型肝炎ウイルス保持者で40歳以上の人 (2)肝硬変の人 (3)慢性肝炎や肝線維症の人 (4)長期飲酒歴(日本酒で3合以上10年)のある人、以上の人は肝臓ガンにかかる危険性が高いと言えます。以上からも肝臓ガンの原因に、B型、C型肝炎ウイルスが強く関与していることが示唆されます。
Q 肝臓ガン診断のための検査について話して下さい。
A 検査には血液検査と画像検査があります。血液検査で特に重要なのは、AFP(アルファーフェトプロテイン)などの腫瘍蛋白の測定です。肝臓ガンが発生、増大すると、多くの場合AFPなどの腫瘍蛋白が血液中に増えてきます。画像検査には、超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影検査などがあります。
超音波検査は、ベッドサイドで簡単にできる利点があり、その普及は肝臓ガンの診断率向上に寄与しています。診断は、血液検査値や画像検査所見などから総合的に診断されます。また超音波ガイド下に針を刺して行う腫瘍生検も行われています。先に挙げた高危険群、特にウイルス性慢性肝疾患の患者さんは、定期的(3、4ヵ月に一度)にAFP値検査と超音波検査を受ける必要があります。
Q 肝臓ガンの治療について話して下さい。
A 肝臓ガンの治療には、(1)外科的切除術 (2)肝動脈塞栓術 (3)エタノール注入療法 (4)経肝動脈化学療法(抗ガン剤の動脈注入)などがあります。
肝臓は再生能力が高く、正常な肝臓であれば全体の8割程度の切除も可能と言われていますが、肝臓ガン患者の多くは肝硬変などの重い肝機能障害があるため、現実に手術治療可能なケースは約20%程度です。
手術不能な肝予備能力の低い患者さんには、(2) (3) (4)の治療法が、単独または組み合わせて行われます。肝動脈塞栓術は肝動脈を塞栓物質(金属コイルやゼラチン)で詰まらせ、ガンへの血流を遮断する治療法です。これは、非ガン部分は動脈と門脈という2つの血流から栄養を受けていますが、ガン部分は動脈のみから栄養を受けるという性質を利用したものです。
エタノール注入治療法は超音波像を見ながら体表面からガン部に針を刺し、エタノールを注入しガン組織を変性、壊死に陥らせる方法です。
経肝動脈化学療法は、カテーテルを肝動脈に留置し、持続的に抗ガン剤を注入する方法です。肝臓ガンでは、初回治療後も経過観察をしっかりする事がとくに重要です。(おわり。名古屋市千種区今池1―28―12、TEL 052・733・1515)