99−今年生まれたヒット商品


デジタル物も個性の時代/暗い世相も反映-「癒しグッズ」も人気

 ヒット商品は世相を映す鏡である。1900年代最後の年である今年、発展を続けるコンピューター社会は、多くのデジタルグッズを世に送り出した。その一方で、リストラだ、事件だという暗い世相への反動から、消費者は心の「癒し」を求めた。デジタルも「癒し」も消費者のニーズ。モノがあふれるこの世の中、本当に必要とされる良い商品だけが選択され、そうでない商品は淘汰される時代である。今年ヒットした商品の数々から、売れた要因を探った。

「パソコン革命」

 発展するコンピューター社会を反映し、今年もデジタル関連の商品はヒットを飛ばした。中でも、既存の概念を覆した斬新なアイデア、付加価値が盛り込まれた商品には、大きな注目が集まった。

 1つは、会話だけではない、電話の新しい使い方を提示した「新デジタル携帯端末」。先駆けとなったNTT移動通信網(ドコモ)グループの携帯電話サービス「iモード」は、2月のサービス開始から半年で契約数が100万台、その2ヵ月後の10月には200万台を突破した。圧倒的な地域カバー率を武器に、絶好調を保っている。

 iモードは、チケット予約や銀行振込、賃貸住宅情報など242(10月現在)の情報サイトを持ち、Eメールの送受信やホームページの検索・作成・発信も可能だ。

 質量ともに充実した情報内容はパソコン世代の若者の心を捉え、同様の新サービスを提供する日本テレコム系のJフォングループや「cdmaOne」(シーディーエムエー・ワン)が好評の日本移動通信(IDO)・DDIグループなど、同業他社を大きく引き離した。

 パソコンでは「革命」が起こった。一昔前には、いかにもメカニックという武骨なデザインと価格の高さが、消費者に敬遠されてきたジャンルである。

 NECやIBM、富士通といった大手の参入で話題を呼んだ格安パソコンや、色にこだわったスタイリッシュパソコンの先駆け「iMac」のノート版、米マッキントッシュ社の「iBook」の登場で、パソコンに「値ごろ感」や「おしゃれ」という、これまでなかった個性が新たに加わった。

 また、パソコンで音楽を楽しめる音声データ圧縮技術「MP3」なども普及し、好調な市場にさらなる刺激を与えた。

独り勝ちの構図

 一方で、今年の世相を色濃く反映したのが「カラフルグッズ」「癒しグッズ」のヒットである。暗い話題が何かと相次ぎ、疲れがたまった現代人が手元に置いたのは、心を癒してくれるモノだった。

 鮮やかなスケルトン(半透明)カラーのiMacが火付け役となったカラフルグッズは、これまで色彩とは無縁だったMDラジカセなどのオーディオ機器にまで浸透し、若者層を中心にインテリアの一部として認知されるまでに至った。

 ほのぼの絵柄の絵本が売れるのも、子供だけでなく大人も「キレる」ご時世へのささやかな抵抗、癒されたい意識の表れと受け取れる。

 モノが売れなくなった時代と言われて久しい昨今、移ろいやすく、不況で財布のヒモが固い消費者をつかむのは容易ではない。だが、消費者が本当に欲しいものは何か、その時々のニーズをしっかり捉えた商品は、価格の高低にかかわらず、確実にヒットしている。

 だが一方で、爆発的に売れた「メガヒット」商品と、そうでない商品、いわば勝ち組と負け組の売れ行きの差は歴然となり、特定商品の独り勝ちの構図が目立った1年でもあった。                (柳成根記者)