朝鮮コンピュータセンターと三星電子-南北の共同ソフト開発
朝鮮語単一ワープロなど


相互依存の協力関係へ/北京に初の共同研究所設置

 南朝鮮の半導体トップメーカーである三星電子が今月2日、朝鮮との家電製品の委託加工とコンピュータのソフトウェアを共同開発すると発表したが、その具体的内容が、このほど明らかになった。コンピュータソフトの南北共同開発は、これが初めて。南朝鮮当局は12月20日現在、三星電子の事業計画を「承認」していないが、実現すれば南北経済協力の新しい形態を生むことになろう。

 

5つのソフト開発

 三星電子が発表した南北が共同開発するソフトウェアは (1)南北単一ワードプロセッサー (2)中国語文字認識 (3)ゲーム (4)文書要約 (5)グラフィックライブラリーの5種類で、三星側が100万ドルを投資し、朝鮮コンピュータセンターと共同で来年1月までに北京に「北京ソフトウェアセンター」を設立する。

 このうち注目されるのは、ワープロソフトの開発。現在、北では「創徳」「青峰」といったワープロソフトが、南では「訓民正音」「アレア・ハングル」といったソフトがあって、それぞれ互換性はない。

 またマイクロソフト社が朝鮮語としてKSコードを採用したことから、インターネットでは、南北いずれのソフトも文書をコンバーター(変換)しなければならないという煩雑さがある。

 さらに現在、南北では、表記法はさておいても字母の順序が異なるなど、一言でこれらの違いを統一すると言っても簡単ではない。

 そういう意味でも南北単一ワープロソフトの開発は、実現すれば画期的なことになる。

 

北の技術に高評価

 今回の共同開発が注目されるもう1つの側面は、これまでの南北経済協力とは形態が違う点だ。

 これまでの南北経済協力というのは、南が発注して北で生産するという委託加工(賃加工)が主だった。また現代グループが推進している経済協力も、南が資金と技術を、北が土地と労力を提供するという形だ。

 ところが今回のソフト開発では、南が資金を、北が技術を提供するとなっている。

 すでに朝鮮では、朝・日翻訳プログラムや音声認識ソフトが開発・発表されており、朝鮮が開発した「KCC囲碁」ソフトは、日本の科学技術融合振興財団の囲碁ソフトウェア世界選手権大会で2回連続して優勝するなど、その優秀性は広く認められている。

 この技術と三星が持つ市場調査のノウハウが合わされば、付加価値のある競争力の高い製品が期待される。

 事実、三星では中国語文字認識ソフトの開発では、北が持っているノウハウをあてにしていると言われている。

 ソフトの共同開発は、中国に設置する「北京ソフトウェアセンター」で行われるが、南北が共同で研究所を設置するのも今回が初めてとなる。

 

10億ドルの投資計画

 三星電子は、南朝鮮で財界順位第2位の三星グループの中核企業で、同グループは昨年11月、10億ドルの南北経済協力計画を発表したことがある。

 海州や南浦に電子複合団地を造成して今年から2002年までに通信網構築など基本施設を整備し、第2段階は2005年までに中国、ロシアへの輸出を推進して年間15億ドルの商品を生産し、第3段階は2008年まで30億ドル相当のシステム製品およびハイテク製品を生産するという内容だった。

 しかしこのとき、南朝鮮当局が三星グループに「政府の承認なく」計画を発表したことに対して警告状を送ったことから、三星電子社長が今年初めに訪北する当初の予定が、6月にずれ込むなど大幅に遅れたという経緯がある。

 今回の経済協力も南朝鮮当局がまだ「南北経済協力事業」として「承認」していないことから、計画通り事が進むかどうかは、明確ではない。

 だが、今回の事業が、三星グループが昨年に発表した事業計画の一環であることと、南北経済協力が、お互いに依存し、メリットを得る段階に入りつつあることは間違いないだろう。              (元英哲記者)