「エコプロダクツ99」記念シンポから-山本良一氏講演


環境と企業戦略の今後

 12月10〜12日に行われた環境技術・製品展「エコプロダクツ1999」(東京ビッグサイト)の記念シンポジウムで、東京大学・国際産学共同センターの山本良一教授が行った基調講演「これからの企業戦略と環境マーケティング」の要旨は次の通り。

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 大量生産、大量消費、大量廃棄をこれ以上続けることはできない。してはいけないし、物理的にもできなくなりつつある。

 リサイクルの必要性はよく認知されているが、実態を見ると、例えば鉄鋼などは日本でも、生産量が再生量を上回っている。途上国では、この傾向がいっそう顕著だ。すなわち動脈が静脈を圧倒しているわけだ。

 では、私たちは今後どういう風に産業経済をつくっていくべきだろうか。

 現在の産業経済は、安い化石燃料を使った大量生産と大量廃棄を成長エンジンにしている。21世紀の成長エンジンは、エコデザインに変わる。それは4R(リペアー、リユーズ、リマニュファクチュアリング、リサイクリング)と、製品のサービス化、自然エネルギーの利用を意味する。

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 これをどう進めて行くか。資源・エネルギーの絶対消費量で言えば、90年のそれを1とするなら、先進国は技術開発を急速に進めて、ただちに4分の1にまで減らすべきだと言われる。また2050年までには最低でも10分の1、20分の1を実現する技術進歩が必要だとされている。

 では、日本のマーケットと産業をいかにグリーン化すべきだろうか。まずは政府が環境規制を強化し、エコロジカルな税・財政改革を実行していく。それによって、市場の枠組みを整えて、そのうえで、環境効率の高い製品を開発する事業体や企業を、消費者や自治体、企業、NGOなどが積極的に支援していく。こういう戦略しか、考えられない。

 すなわち、生産者側としての企業は、経営を環境効率経営に変え、ISO14001を取得し、環境会計を導入して情報開示をする。

 消費者、自治体、NGO、購入者としての企業は、環境情報を見て製品を差別化し、環境効率の高い製品・サービス、すなわちエコプロダクツを優先的に調達し、グリーン購入をしていく。または企業の環境格付けを行って、グリーン投資(エコファンド)を行っていく。

 このように、企業の積極的な環境対応に対し、製品資本市場が素早く応答し、応援していく構造を作って行くべきだろう。

 現状では、規制は強化される方向にある。税制改革はこれから議論される。グリーン購入ネットワークは2000団体を超えて拡大しているし、グリーン投資については、すでに1700億円を越えるお金が集まっている。エコファンドに集まるお金は、2000年には1兆円を越えて、将来的には4、5年で100兆円に達するのではないだろうか。

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 環境効率の高い製品やサービス、すなわちエコプロダクツは、(1)製品の改善 (2)製品の再設計 (3)製品のコンセプトの革新C社会システムの革新――以上の4つのステップを踏みながら発展し、一般化される。

 日本の企業は製品改善において相当な実力を持っており、再資源化が容易な製品が数多く出ている。またハイブリッドカーやゼロエネルギー住宅など、再設計の段階に入ったものも出てきている。これらは、90年の技術水準に比べると、5倍の環境効率、資源生産性の向上を達成している。

 さらに革新的なものに、エコファンド、ゼロエミッションのビール工場、パッケージレスの音楽配信サービスなどがある。

 21世紀は間違いなく環境効率が今の10倍、20倍の製品・サービスが主戦場になる。この分野で利潤を上げて行ける企業こそが、世界的な競争力を持ってくるだろう。