共和国が推進するジャガイモ農業(上)
「ジャガイモ農業に力を集中しよう」――金正日総書記の両江道大紅湍郡現地指導(98年10月1日)を契機に、共和国では食糧問題解決のために、ジャガイモの栽培を大々的に推進している。年初の共同社説も、「ジャガイモ生産で革命を起こすよう」呼びかけた。こうした計画、構想に基づき共和国では、ジャガイモをコメと共に「主食」(労働新聞1月3日付)にし、食糧問題を解決しようとしている。南アメリカのアンデス山脈から北はメキシコに至る3000〜4000メートル級の高原が原産地と言われるジャガイモ。今では世界の食卓でも馴染みの深い作物だ。共和国で推進しているジャガイモ農業について、2回にわけて紹介する。(基)
山間、高原地帯で作付増す/新しい種いも入手し実験
労働新聞など共和国メディアが紹介している、ジャガイモ増産に対する対策を整理すると、@適地適作の原則でジャガイモ栽培に適した土地を選び、土地整理事業を行うA多収穫のための品種改良を行うB有機質肥料を増産するC2毛作あるいは2期作を推進する――ことなどだ。
まず@、適地適作の原則で、ジャガイモ栽培に適した土地をどのように選んでいるのか。
ジャガイモは元来、冷涼な気候を好み気温15〜21℃程度が生育に適した温度で、高山地帯で栽培されてきた。共和国でも両江道などの北部高山地帯が主な栽培地だった。しかし気候に合わせた品種改良が世界的に進んだことから、山間(畑)、高原(同)、平地(水田)などのどの地帯でも簡単に栽培できるようになった。
共和国では昨年までの2年間、咸鏡南道、平安北道の水田で水稲とジャガイモの2毛作が実験的に行われ、成功を収めた。それが今年、全国に一般化される。とくに新たに導入したヘクタール当たり80トン収穫できる種いもを両江道大紅湍郡で実験栽培を行った結果、71トンの収穫を記録した。
この経験をもとに農業省では今春までに、栽培面積を昨年比2倍に増やし、2002年までにはさらに体系的に拡大する計画だ。
国連食糧農業機関(FAO)の統計資料によると、共和国における昨年のジャガイモ作付面積は4万8000ヘクタールで、生産量は51万トン。ヘクタール当たり約10.6トンの収穫量だが、栽培面積を2倍(9万6000ヘクタール)にし、ヘクタール当たり71トン収穫可能な種いもで栽培すると、単純計算だが681万6000トンの収穫が可能だ。
栽培地域を見ると、ヘクタール当たりの穀物収穫が低い土地と粘土質の混じった砂の多い土地、元来ジャガイモ栽培に適した山間地帯で栽培面積を拡大する。収穫が低い土地とは、トウモロコシのヘクタール当たりの収量が1.5トン以下の畑で、こうした場所ではジャガイモへの転作が進められる。
現在、慈江道、咸鏡南・北道などの山間地帯、そして両江道の大紅湍郡、慈江道の狼林郡、咸鏡北道の延社郡、茂山郡、咸鏡南道の長津郡、赴戦郡などの高原地帯では作付面積を大幅に増やしている。(民主朝鮮98年11月9日付、地図参照)
また平地でも咸鏡南道、江原道、平安北道などでは水田(粘土質の土壌の混じった砂が多い土地、地下水が少ない水田)の前作として今春からジャガイモを栽培すると言う。
咸鏡南道では今年、ジャガイモ畑に適した土地を選んで昨年より1万2000余ヘクタール多くの面積にジャガイモを植える。これは東京ドーム約2566個分の面積に当たる。
具体的には長津、赴戦、端川、金野、定平、北青の各郡でそれぞれ1000〜2000ヘクタール、咸州、栄光、新興、耀徳、洪原、徳城、虚川、利原の各郡と咸興市の会上区域ではそれぞれ500〜1000ヘクタールの耕地に植える。
江原道では昨年9月から、ジャガイモやサツマイモを大々的に生産するため3万ヘクタールの土地を二段階にわけて田畑として整理する事業を推し進めている。この面積は東京ドームの約6416倍。
同道では昨年末までに、1段階の目標である2万ヘクタールの土地を田畑として整備した。その内容は、あぜや水溜まりなどを整理し、約0.33ヘクタール、約0.26ヘクタール規格の大きな田畑に変え、すべての土地を機械化しやすいようにしたことだ。
土地整理の対象は、金化郡、鉄原郡など軍事境界線に隣接する郡、板橋郡、法洞郡など山間地帯の郡、安辺郡など海岸沿いの郡だ。
次にAの品種改良について見る。
原産地であるアンデス地方では現在、何千もの品種がある。日本には外国から輸入された品種が約300あるが、実際に使われているものは国内で育成された品種を含めると約20品種ほどだ。男爵いもやメークインなどが代表的である。
共和国の両江道大紅湍郡では昨年、新たに入手した種いもを栽培することによって生産高をヘクタール当たり20トンから71トンに伸ばした。実験農場ではオランダ、ドイツ、フランスなどから購入した種いもの栽培も行われていると言われる。
国内生産量76%を網羅する北海道でのヘクタール当たりのジャガイモ収穫量(96年)は36.1トン。
ちなみにFAOの統計資料によると、98年度の世界各国のヘクタール当たりの生産量は、オランダが約42.9トンで1位、2位はスイスの約42.6トンとなっている(表参照)。
主要な国の生産量
オランダ | 42.99 |
スイス | 42.64 |
米国 | 37.86 |
ドイツ | 34.97 |
日本 | 32.69 |
共和国 | 10.62 |
ロシア | 10.07 |
(ヘクタール当りの収穫量、単位トン、1998年国連食糧農業機関の統計資料より)
良質の食物繊維供給源
ジャガイモはフランス語でポム・ド・テール、「大地のりんご」と言う意味だ。リンゴのようにビタミンB1はもちろんビタミンCやカリウムを多く含む機能性食品であることから、こう呼ばれるようになったと言われている。
成分はでん粉の中に含まれており、とくにビタミンB1、B2、ニコチン酸、ビタミンCの含量はリンゴより多い。白米と比べてもその成分はほとんど変らない。
ビタミンCはガン、高血圧、心筋梗塞などの成人病に対する予防効果があり、カリウムは血管の老化で起こる脳出血を防ぐ働きがある。さらに鉄分の供給によって貧血防止効果を発揮し、良質の食物繊維供給源ともなる。
300グラム強のジャガイモを食べれば、1日に必要なビタミンC(50ミリグラム)を摂取できる。
ジャガイモの成分(100g当り)
カロリー(kcal) | 77 |
水分(g) | 79.5 |
タンパク質 | 1.9 |
脂質 | 0.1 |
糖質 | 17.3 |
繊維 | 0.4 |
灰分 | 0.8 |
カルシウム(mg) | 5 |
リン | 42 |
鉄 | 0.5 |
ナトリウム | 12 |
ビタミンA(IU) | 0 |
ビタミンB1 | 0.1 |
B2 | 0.03 |
ニコチン酸 | 1.0 |
ビタミンC | 15 |
料理メモ
共和国でジャガイモはどう食べられているのか。労働新聞などに紹介された料理方法をひろった。
ジャガイモ団子粥 ジャガイモをすりおろした後、でん粉を混ぜこねて団子を作る。沸騰したお湯に豆を入れて煮立たせ、ジャガイモ団子を入れ、再び沸騰させる。コメを少々混ぜても良い。
ジャガイモ豆スープ 材料はジャガイモ、豆、胡麻。ジャガイモは洗って皮を剥いた後、水に浸しておいた豆と一緒にすりおろす。これを沸騰したお湯に入れて煮立たせた後、塩と胡麻で適当に味つけする。麺類のスープにも。
ジャガイモ牛乳粥 鍋に牛乳を入れて茹でたジャガイモと一緒にゆっくり煮て粥状にする。消化吸収がよいので、児童の栄養食として奨励されている。
ジャガイモチジム ジャガイモをすりおろして、ざるにとり、軽く水気をきったあと、フライパンで焼く。好みで豚肉、しし唐辛子などを加えても良い。
※その他、ジャガイモのでん粉を使ったジャガイモ冷麺、ジャガイモのでん粉で皮を作るジャガイモ餃子などがある。