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視点


 「周辺」とは「あるものをとりまいている、まわりの部分。またあるものの近く」。大辞林(三省堂)にはこうある。

 新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案の中の「周辺事態」の定義が論議を呼んでいる。政府見解は「地理的概念ではなく事態の性質に着目した概念」(小渕首相)というもの。一方、民主党は「地理的概念としては日米安保の想定する極東の中」(菅代表)と主張する。

 だが、前述の意味にもあるように、「周辺」が地理的概念であることは言うまでもない。

 この点については、自由党・小沢党首の発言が日本の本音をはっきり表している。「隣接する各国の地域は全部入ってくる。ロシア、朝鮮半島、中国、台湾だろうが当たり前だ」

 政府の本音も実はここにある。なのに何故、「地理的概念でない」との立場にこだわるのか。それは、台湾問題に神経質な中国を刺激したくないとともに、抑止力となることを期待して、戦略的にあいまいにしたい米国の意向を反映させたものであるからだ。

 「ガイドライン」は、アジア太平洋地域での地域紛争を抑止する米軍を、日本が官民あげて後方支援するための基本的枠組みである。有事の際には自衛隊の派兵も当然ある。日本政府の念頭に「朝鮮半島有事」があることも明らかだ。

 「周辺」の言葉をあいまいにするだけで、「ガイドライン」の侵略的性格を払拭できるものではない。(聖)