九州大学大学院、朝鮮大学校卒業者に受験認める
九州大学大学院の比較社会文化研究科(有馬学研究科長)が、1999年度の修士課程入試で、朝鮮大学校卒業(見込み)者に初めて受験資格を認めた。国立大では京都大学大学院の理学、経済学、教育学、文学の各研究科も99年度入試から門戸を開放しており、理学研究科には1人が合格している。文部省は朝鮮大学校が各種学校だとして受験資格を認めていないが、東大や一橋大、東京外大などでも教職員の間で受験資格を認めようとの声が上がっており、国立大学大学院での門戸開放の動きは続きそうだ。
九大大学院比較社会文化研究科の今回の措置は、募集要項にある出願資格の「本研究科教授会において、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」を適用したもの。94年の設立以来、同研究科がこの規定を適用したケースは今回が初めてだが、これは学校教育法施行規則に則った規定であり、「とくに朝鮮大学校卒業者を想定したものではない」(有馬学研究科長)と言う。これに該当する志願者は、あらかじめ研究計画書や大学の成績などを提出して出願資格の認定を受ける必要がある。
有馬研究科長は「京大大学院の際の報道などで、朝大生の国立大学院受験資格問題が社会的な関心事になっていること自体は知っていたが、とくに問題意識があっての措置ではなく通常の手続きを取っただけ。募集要項にある出願資格をそのまま適用し、大卒と同等の能力があるかどうか、入試委員会と教授会で正式に審査をして認定した。これについて、研究科内で一切異論はなかった」と語る。
九大の杉岡洋一学長は、国立大学協会で入試問題を担当する第2常置委員会の委員長を務める。そのお膝元で起きた今回の門戸開放。あくまで「資格なし」とする文部省の今後の対応が注目される。しかし、すでに過半数が受験資格を認定している公・私立大に続く京大、九大など国立大大学院の動きは、文部省の指導が形骸化しつつあることを示している。