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時事・解説/南朝鮮で経済聴聞会


 南朝鮮「国会」で先月18日から開かれていた経済聴聞会が11日、事実上、終了した。国際通貨基金(IMF)の支援に至った通貨・金融危機の責任追及が目的だったが、旧与党である野党ハンナラ党の議員と、最大の責任者である前「大統領」金泳三が欠席。金泳三は「大統領」選挙資金不正授受疑惑が再浮上したにもかかわらず、釈明会見すら行わないという徹底した「拒否反応」を示した。責任追及の場にもかかわらず責任者不在のまま終わった今回の聴聞会は、消化不良の感が否めない。(根)

 

前「政権」の責任追及

 聴聞会では、前「政権」の責任追及を柱に、経済失政の事実、金泳三が危機の状況を把握していたのかどうか、一昨年7月の起亜グループ破たんの際の処理の遅れ、金泳三の次男・賢哲が深く関与したとされる携帯電話事業認可をめぐる不正疑惑などが焦点となった。

 南朝鮮では、一昨年1月に韓宝グループの中核企業、韓宝鉄鋼が5兆ウォン(約5000万円)の負債を抱え倒産。これを引き金に真露、三美、大農、起亜と相次いで倒れ、IMFにすがらざるを得ないまでに状況が悪化した。これらの原因が、金泳三が明確な経済政策を打ち出さず、相次ぐ倒産にも迅速な対応を怠ったことにあるというのが、与党側の一貫した主張だ。

 証人喚問では、「タイやインドネシアの経済危機が表面化した時も、金泳三と当時の与党は何の対策も講じず、指導力不足を露呈させた。経済危機は人災だったのではないか」という与党側の指摘に対し、「事前の準備が不十分なまま、経済協力開発機構(OECD)に加盟してしまった」(李揆成・財政経済相)、「一昨年1月末に通貨危機の危険性を感じたが、根本的な対策を講じることができなかった」(李経植「韓国銀行」前総裁)など、前「政権」の失政を認める証言が相次いだ。しかし、当の金泳三本人が不在のため、これ以上の突っ込んだ議論は実現しなかった。

 

旧与党の弁明は皆無

 今回の聴聞会の焦点の一つに政経癒着の真相究明がある。これが、韓宝事件の再浮上という形で大きくクローズアップされた。

 4日に証言台に立った鄭泰守・韓宝グループ前総会長が、1992年の「大統領」選挙の直前、当時の与党・民自党候補の金泳三に選挙資金150億ウォン(約15億円)、同党に党費50億ウォン(約5億円)を提供した事実を認めたのである。

 同グループをめぐっては、韓宝鉄鋼が資金提供の見返りに、大手銀行から5兆ウォン(約5000億円)もの巨額の不正融資を受けていたことが発覚。その黒幕に、金泳三「政権」のキーマンとして政治資金調達から政策決定まで務め、「若き副大統領」「金庫番」の異名を持っていた金賢哲の存在があり、父・泳三も深く関与したとの指摘がありながらも、鄭前総会長が口を割らなかったため、真相は闇に葬られたかに見えた。

 ところが、口が堅かった鄭前総会長がここに来て暴露発言。聴聞会出席拒否でだんまりを決め込むつもりだった金泳三は、思わぬ所で足元をすくわれた形となった。

 与党側は金泳三に証人として出席を求めたが、本人は疑惑を全面否定し、与党が出席を求めていた8日には突然、登山に出掛けて欠席し、9日に予定していた自宅での釈明会見も直前に中止。通貨危機の責任問題も韓宝事件の真相も、旧与党側から一切の弁明がないまま、聴聞会は中途半端な幕引となってしまった。

 

市民からも非難の声

 今回の聴聞会では、危機の原因に関する議論から、金泳三「政権」の不正を追及する方向に進んでおり、現「政権」と前「政権」の対立の構図が浮かび上がっている。これについては、「金大中『政権』が改革を推進できる時期は98年から99年初めまでであり、改革が失敗すれば内閣制改憲が不可避だろう。改革のためには民主勢力を包容すべきであり、その対象は(金泳三の)釜山・民主系だが、経済聴聞会は民主大連合の構図と衝突する。そうでなければ再び自民連という旧勢力と連合する他ない」(高麗大教授の崔章集「大統領」諮問政策委員長)との見方もある。

 市民からは通貨危機の徹底的な責任追及を求める声も日増しに高まっており、また不正献金の問題をめぐっては今後も与野間で攻防が続くものと見られる。