人種差別撤廃条約を考える第1回勉強会
権利意識高め、広くアピール
人種差別撤廃条約勉強会(主催=朝鮮人強制連行真相調査団・朝鮮人側)の第1回目が20日、東京・台東区の同胞法律・生活センターで行われた。3回に分けて開かれるもので、今回のテーマは「子どもの権利条約・規約人権委員会の勧告と今後」。朝鮮学校の教員と父母、生徒、日本市民らが参加した。
昨年国連では、子どもの権利委と自由権規約委が、それぞれ日本政府に朝鮮学校差別是正を含む勧告をした。そのことから勧告を実現させるため在日同胞自らが権利意識を高める必要性と、政府や地方自治体に広くアピールしていく重要性を改めて認識しようという趣旨で、今回の勉強会が企画された。
昨年8月の共和国の人工衛星打ち上げ以降、各地で相次いだ在日朝鮮人への人権侵害事件を国際的な視点でともに考えようという目的もある。1995年に人種差別撤廃条約を批准した日本政府の同条約実施状況に対する初の審査が8月に予定されているからだ。
第1回目のテーマは「子どもの権利条約・規約人権委員会の勧告と今後」。調査団の洪祥進事務局長が報告した。
洪事務局長は、昨年6月に、「子どもの権利条約」の日本での順守状況を審査した国連子どもの権利委が、朝鮮学校卒業生に国立大学受験資格がないことへの懸念を示し、差別解消を日本政府に勧告したことについて述べた。
さらに11月には、「市民的政治的権利に関する国際規約」の日本での順守状況を審査した国連規約人権委が、朝鮮学校への制度的差別是正、外国人登録法の撤廃などを日本政府に勧告したことについて指摘。日本政府に対し、2つの委員会が相次いで在日朝鮮人差別是正を求めたことは、総聯代表が地道に国連で活動してきた成果の一環だと強調した。
討論から
質疑応答では、「日本政府は国連勧告を尊重し、朝鮮学校への差別を解消すべきだ」「日本のNGO団体や市民と広く協力して効果的に運動を展開していこう」などの意見が交わされた。また、意見交換では「子どもの権利条約」の普及啓発を推進する決議を96年12月に採択した埼玉県議会の例もあげられた。こうした地方自治体に、もっと積極的に働きかける必要性が強調されるなど、勧告の次の段階として日本政府に差別是正を求めていくための方法論も論議された。
昨年5月、総聯の代表としてジュネーブの国連欧州本部で開かれた子どもの権利委の審議を傍聴した、神奈川朝鮮中高級学校の張末麗教員は「私たちの民族教育の権利に関する主張は、国際社会に強い共感を持って受け入れられた。それに比べ、日本政府の対応は大幅に遅れている感が否めない。私たち教員自身が日本社会で民族教育権を広くアピールし、権利を勝ち取って行かなければならない」と語っていた。
また、在日朝鮮人問題を専攻する朝鮮大学校政治経済学部3年の白任さんは「私たちのゼミでは国連の各人権条約に関する学習会をたびたび開いてきた。今日は分かりやすくてとても勉強になった。今後も、このような学習会をどんどん企画して欲しい」と話していた。
●今後の予定
第2回=27日
「人種差別撤廃条約委員会での国別審査経過から」(講師=前田朗・東京造形大助教授)
第3回=3月6日
「人種差別撤廃条約とマイノリティの権利」(講師=武者小路公秀・フェリス女学院大学教授)
場所はいずれも同胞法律・生活センター(JR上野駅下車徒歩8分)、午後2時〜5時、資料代として1回につき1000円。配布資料準備のため要予約。予約、問い合わせは朝鮮人強制連行真相調査団 TEL 03−3262−7111へ。