都教育委員会職員ら、東京朝鮮第9初級学校を初訪問
社会・人権教育を担当する、東京都教育委員会と都内各区市教育委員会の職員ら25人が2日、東京・杉並区の東京朝鮮第9初級学校を訪れ授業を参観、同校アボジ会会員らと懇談した。「民族共生をめざす地域社会のあり方を考える――東京朝鮮第9初級アボジの会を訪ねて」と題し、人権学習指導者研修・人権学習セミナーの一環として行われたもの。都教委が公式の研修として朝鮮学校を訪れたのは初めてだ。
今回の訪問の目的は主に2つ。1つは都内に11校ある朝鮮学校についてまず知ること。
さらに、朝鮮学校を広く知ってもらうために地域社会との交流を積み重ねてきた同校のアボジ会の活動について聞くことだ。「在日朝鮮人生徒へのいやがらせや暴行事件などを乗り越えて、民族共生をめざす地域社会のあり方」(実施要項から)について考えるためだ。
参加者らは、各教室を回って国語、算数の授業などを参観した。朝鮮語で行われる授業に、みな興味深げだった。
続いて、同校のアボジ会とオモニ会、金秀彦校長と参加者による懇談会が行われた。
金校長が教育内容と課外活動などにおける民族教育の特徴について説明。21世紀に羽ばたく有能な人材を育てることが、民族教育の最大の目標だと強調した。
またアボジ会初代会長の高錫民さんは、朝鮮学校は在日1世が残してくれた最大の財産だと述べながら、「学校は今も昔も同胞たちの心の拠り所だ。日本で生まれ育った子供たちに、代を継いで民族教育の素晴らしさを伝えたい」などと、民族教育に対する父母らの思いを語った。
アボジ会の役員らは、毎秋、近隣の日本市民らにも広く開放して行う同校のフリーマーケットについて説明。「相互理解のためには対話の場を多く設けることが大切だ。
アボジ会ではこれまで地域社会との交流を柱の一つにしてきた。今後も朝鮮学校を拠点に、日本市民との交流を深めていきたい」などと述べた。
また、日本政府が朝鮮学校卒業生に大学の受験資格を認めていないことや、自治体による公的補助金が日本の学校に比べて著しく低いことは、民族教育を発展させるうえで大きな障害になっていると指摘。父母や同胞商工人らの財政的な負担は日増しに大きくなっていると訴えた。
都教委の職員らは、教育内容や、地域で朝鮮学校がどう思われているのか、などについて質問していた。
懇談会を終えた都教委の職員らからは、「まず互いを良く知るためは、こうした話し合いの場を設ける
ことが大切だと改めて思った」「日本の学校でも地域に根付いた学校作りを目指しているが、『フリーマーケット』などを通じて地域に広く開放されている朝鮮学校は、良いモデルケースの一つになると思う」などと感想を語った。
オモニ会の初代会長を務めた女性同盟中・杉支部の申静子委員長は「保護者が中心となり、試行錯誤の中で地域との交流を重ねてきた。都教委からの働きかけにより、懇談会が実現したことはとても嬉しい」と話していた。
アボジ会の活動
同校のアボジ会(金容星会長)は1996年7月に結成。近隣の日本市民に民族教育への理解を深めてもらおうと、学校を拠点に幅広い活動を行っている。96年から毎年秋に開催しているフリーマーケット、近隣小学校のPTA、教育関係者らとの懇談会などが恒例の行事。そのほかにも、隣接する日本学校のPTA役員、生徒とのキャンプや焼きいも大会などを開いている。
昨年4月の定例会では、@中野・杉並区からの助成金拡充A校舎の補修作業B教育セミナーの開催Cフリーマーケットの成功――の4つを今年度の活動の柱にすることを決定。2月11日には日本人講師を招いて教育セミナーを開いた。
今回の都教委職員らの訪問は、何人かの職員が昨年11月に同校で行われたフリーマーケットに参加したのがきっかけだ。地域の人にも広く開放した朝鮮学校のフリーマーケットは、地域に根差した学校作りの参考になるとの意見が出され、今回実現の運びとなった。