時事・解説/共和国の科学重視思想
3月25、26の両日、平壌で全国科学者・技術者大会が開かれた。1991年10月に全国科学者大会が開かれて以来、この種の大会は約8年ぶり。一方、金正日総書記は今年を「科学の年」と定め、最初の訪問先に科学院を選び、3月7日の地方人民会議選挙では咸鏡南道の科学院咸興分院を訪れ科学者の候補者に投票した。これらは共和国が科学技術の発展を重視していることを示すものだ。共和国では、電子工学と生物工学、熱工学、新素材をはじめ先端科学技術を積極的に発展させ、21世紀の近代的な工業を築く保証を整えるとしている。共和国が掲げる科学重視思想について見た。(聖)
「工場止まっても中断せず」
科学重視思想とは文字通り、社会主義を建設するうえで科学技術の発展に大きなウェイトを置くことだ。
では何故、科学重視思想を掲げるのか。一言で言えば、強盛大国建設の推進力にするためである。
共和国の国家建設目標は政治、軍事、経済的に高水準に達した強盛大国だが、その点で解決が迫られているのが経済問題だ。そのため共和国では経済建設に大きな力を注いでいる。その推進力が科学技術である。
総書記は1月11日に科学院を訪れた際、自立的民族経済の威力を十分に発揮させるために科学研究成果をその都度生産に導入するよう指示。3月7日に化学部門の研究機関である科学院咸興分院を訪れた際も、人民生活を向上させるためには化学工業が非常に重要だとして、化学製品の生産を高い水準に引き上げなければならないと語った。
全国科学者・技術者大会で報告した崔泰福書記も、経済を活性化し科学技術を世界的水準に上げること、当面しては既存の経済土台を効果的に利用して人民生活を向上させるうえで提起される科学技術的問題を解決することについて言及。
そして、「たとえ工場が止まるようなことがあっても科学技術研究を中断してはならない」と述べた総書記の志を肝に銘じ、いかなる条件下でも科学研究を積極的に推し進め、科学技術水準を高めなければならないと語った。
青年が中心的役割
労働新聞1月16日付は「科学重視思想を具現し強盛大国の前途を切り開こう」と題した社説を掲載し、科学技術の発展で転換を起こしてこそ、社会主義建設のすべての分野で転換が起きると強調した。そのうえで、豊富な地下資源の効果的利用、品種改良による2毛作の推進、石炭工業と電力工業の生産力アップなど、どれ一つ見ても、科学技術の発展なしには考えられないとしている。
最近だけでも、コークスを使わずに無煙炭で銑鉄ができる酸素熱法溶鉱炉の完成、新素材の開発や超マイクロ加工に役立つ30万倍電子顕微鏡の開発など、経済分野に生かせる科学技術の成果が報告された。
金正日総書記は91年10月28日に全国科学者大会参加者に送った書簡の中で、「現代は科学と技術の時代である」として、当初から経済建設に占める科学技術の重要性を指摘していた。また、朝鮮労働党は主要技術経済指標を世界的水準に到達させるための2000年までの科学技術展望発展目標を示していた。
大会後、最大の成果として指摘されているのは研究力量が青年科学者、技術者らで強化されたことだ。数千人の青年科学者、技術者らが研究家となり、大勢の学位・学識所有者が誕生して先端科学研究で中心的役割を果たしている。
このような過程があったからこそ、昨年8月に初の国産人工衛星の打ち上げに成功するなど、近年だけでも百余件の科学技術成果を収めることができた。
電子工学発展に力
ではどういう部分に重点を置いていくのか。
総書記は科学院を訪れた際、新たに設けられた電子工学部門と数学研究所を長時間にわたって視察した。そのうえで、電子工学をはじめとする科学技術を急速に発展させなければならないと述べた。
労働新聞1月16日付社説も、「電子工学をはじめ最先端分野の科学技術を積極的に発展させなければならない」と指摘している。
民主朝鮮3月25日付によると、金正日総書記は96年11月、私は科学を重視する、そのため私がコンピュータ技術を研究しながら、その部分の研究事業を指導しているのだと述べた。
昨年2月にも総書記は全国プログラム競演・展示会に出品されたプログラムを長時間見て回り、プログラム開発で提起される原則的な問題について明らかにしたという。
労働新聞3月25日付は、最先端技術を発展させることが科学研究事業における中心課題の一つだとしており、共和国では今後もコンピュータ技術の向上に力を入れていくものと思われる。