京都日校学生会「第21回みんなの為のコンサート」
日校在学朝鮮人京都府学生会(学生会)の「第21回みんなの為のコンサート」が3月29日、京都市の京都西文化会館ウエスティで行われ、300余人が観覧した。学生会は、日本の中・高校に通う同胞学生らのネットワーク組織。朝鮮語の習得、民族文化の講座などを行っている。年間の活動を総括する公演には、民族の意識を確立してきた出演者らの努力の軌跡が織り込まれ、感動を誘った。なお兵庫(14日)、東京(27日)、愛知(28日)の学生会もそれぞれ公演を行った。
コンサートは創作劇と、歌と踊りのアンサンブルの2部構成。上演は約3時間にわたったが、最後まで楽しめる充実した内容だった。
1部の劇「やがて春は来る」は、通名で日本の高校に通う主人公・李和美が、学生会で同じ境遇の仲間たちと触れ合ううちに朝鮮人としての自己に目覚め、本名を名乗り、より積極的な生き方を選ぶまでを描いたもの。日本人の交際相手との葛藤と和解、互いを認め合いながらそれぞれの道を歩む姿が横軸としてからめられ、「日本人」としての生活の中で「民族」を探る日校在学生が抱える悩み、心の揺れがリアルに表現された。
第2部では、舞踊、カヤグム併唱、農楽などの民族色豊かなものや、学生会メンバーのオリジナル曲「フォロウ・アワ・ハーツ 心のおもむくままに」のギター弾き語り、「学生会からはじめよう」の合唱などが披露され、大きな喝采を浴びた。
地元(伏見支部)の朝青員と一緒に公演を見にきた日校在学生、金恵利さん(16)は、「初めて見にきたけど、楽しかった。私は本名で通っているけど、劇の内容にはすごく共感できた」と感想を語っていた。
もう一つの「卒業公演」
今回のコンサートには、中1から高3までの16人が出演。うち、今春で高校を卒業するなどした6人は、学生会からも「卒業」する。
そのうちの1人、朴伸次さんは高2の1年間、ニュージーランドに交換留学した。目的は、違った環境で自分を鍛えること。異文化の中で積極性が触発されたのか、「もともと内気だったが、自分をアピールすることが苦でなくなった」。
ただ、こうした留学での「成功体験」より、学生会で得たものが大きいと感じている。朴さん自身は、幼い頃から本名で、朝鮮人として生活してきた。それが、学生会で同世代の仲間と自分のアイデンティティについて真剣に考えるうちに、自分の中のより深いところで民族を意識できるようになった。
「自分は何者か、と考え続けた経験は、これからの長い人生でも生きてくるはず。だから卒業は、新しい自分の出発だと思う」
会長の林伽○さんは(○は人偏に耶)、コンサートで手記「私と学生会」を朗読した。学生会からの「卒業」について「駅で言うなら終点ではなく乗換え」と表現。学生会で敷いた「人生のレールの上」を、「これからも真っ直ぐに、迷うことなく進んで行く」と話した。
「卒業」は、これまで支え合ってきた仲間のいる「場」から、ひとまず離れることを意味する。それでも林さんは、「人生苦しいことはいくらでもありそうだが、乗り越えられるような気がしている」。仲間たちとは今後もつながりを持ち続けるが、これからは人に支えられてばかりではないという自信がある。
「朝鮮人としての自分を見直して見たら、周囲の日本社会が違って見えるようになった。日本人の友人たちも、朝鮮文化を知る私に好意と関心をもって接してくれる。与えられた場の中だけでなく、どこでも通じる自分。それを、学生会でみつけることができた」