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総聯千葉支部副委員長殺害・放火事件から半年


 昨年10月15日に総聯千葉支部の羅勲副委員長が殺害され千葉朝鮮会館が放火された事件から、今月15日で半年が経過した。目下のところ、警察の捜査が犯人逮捕・真相解明に向けて進展している様子はない。その一方、反共和国・反総聯の世論操作が強まっていることもあり、地元同胞や組織にとっての不安要素は尽きない。現況と背景を見る。(賢)

 

真相解明進まず/「敵視」あおる風潮に尽きぬ不安

 千葉県警では事件発生当初、120人体制による特別捜査本部を設置した。最近、県警が総聯県本部に説明したところでは、現在もこの体制で捜査を続けているものの、有力な手がかりは得られていないという。

 そうした中、地元同胞らの間には、捜査当局の真意などに疑問を持つ空気もある。捜査の端々に、「総聯監視」とも取れる要素がちらつくからだ。

 ある同胞女性(70)は、「聞き込みの警察官から、総聯の会費は払っているか、などと質問されたことがある。事件と何の関係があるのか。警察手帳を持たずに来たり、高圧的にものを言われたこともある」と、不快感を隠さない。

 2月には、朝銀千葉の職員に対する県警捜査員の尾行が明らかになった。

 総聯県本部によれば、この職員は事件との関連性がまったく考えられず、所轄署に置かれた捜査本部の幹部からも、事件とは無関係との言質が得られているという。

 しかし県警は、総聯などの抗議に対し、不安を与えたことは申し訳ない、などとしながらも、納得のいく説明は行っていない。

 ただこうした事実があるとは言え、総聯県本部は真相解明を追求する立場から、警察の協力要請には応じている。日本人有志による事件調査委員会の廣瀬理夫事務局長(弁護士)は、「捜査への警戒感が生じても無理もない現状の中、総聯は適切な対応に努めている」と指摘する。

 

◇◇

 真意の疑われるこうした「捜査」の在り方については、朝鮮半島情勢の緊張に際し、総聯弾圧の機をうかがう日本政府の姿勢との関連性を考えざるを得ない。

 「ミサイル」騒ぎの際にある国会議員が「在日朝鮮人は人質」と発言したり、公安調査庁長官が今月1日の衆議院で、総聯が「破壊活動を行う危険性」について言及したことは、日本政府内に危険な意図が存在することを端的に示すものだ。最近では、1994年の「核疑惑」騒動の際に、日本政府内で「朝鮮有事」を想定し、朝銀への指導監査強化や、破壊活動防止法の適用による総聯の解散指定などを盛り込んだ「危機対応計画案」が練られていたとの報道もあった。

 事件後、千葉では総聯県本部や事件調査委員会が、真相解明に向けて捜査当局への要請や、正しい世論の喚起に努めてきた。

 しかし、「新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」関連法案制定の思惑も絡み、日本社会では、共和国や総聯への敵視感情があおられる風潮は容易に止みそうにない。

 3月に、何者かが千葉朝鮮初中級学校のガラスを割り、いたずら書きをする事件が発生したことも、そうした風潮の根深さを示すものだろう。

 ただ見方を変えれば、昨年の千葉での事件をはじめ、総聯や在日朝鮮人をねらった一連の犯罪の真相解明を追求していくことは、不当な世論操作を告発することにも通じる。総聯県本部や調査委員会では、「問題の本質をうやむやにしないためにも、事件を風化させたり、迷宮入りさせてはならない」としている。