視点
「祝典ではなく、葬儀だ」
米国の一部外交専門家や議員らからこんな批判の声が出ている。23〜25日にワシントンで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳に対してである。
NATOは4月4日で調印50周年を迎えた。今回の会議はその祝賀の意味もあったが、ユーゴスラビアへの空爆と重なって、ムードは一向に上がらず終い。
それでも空爆から1ヵ月目となった24日に採択された新「同盟の戦略概念」は、国連の承認なしに米国の主導で踏み切った今回の空爆を正当化して見せた。
新「戦略概念」は、「NATOは、国連安保理の決定、あるいはOSCE(欧州安保協力機構)が責任を負う平和維持その他の活動を、場合によってはNATO自身の手続きにより、NATOの資源と能力を使うことを含めて支援する」と、国連の決議なしでもNATOの裁量で紛争に介入することを宣言。この点で「バルカン半島での危機対応作戦に関する一連の決定」がモデルケースになると強調した。
NATOの一員である仏のシラク大統領は、「軍事機構の国連軽視を認めれば、他の機構も同様の態度をとりかねない」と非難する。
今回の新「戦略概念」は、世界的覇権をめざす米国の戦略を後押しするもので、今後、他地域でもユーゴに対するような暴挙が繰り返されないとも限らない。
そうなれば地球全体が平和の「葬儀場」と化すことになる。(聖)