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時事・解説/空転する4者会談


 第5回4者会談が4月24〜27日、ジュネーブで開催されたが、「今回の会談でも、朝鮮半島の強固な平和と安全保障の問題に関連した実践的な対策は一つも示せないまま空転した」(外務省スポークスマン、4月29日)。4者会談開催の本来の目的、共和国の主張などについて改めて見た。

 

Q そもそも会談開催の目的は何か

A 朝鮮半島での停戦状態を終わらせ恒久平和を樹立することにある

 米国は1996年4月に発表した「済州島宣言」で、朝鮮半島での「恒久的平和協定を実現する過程を始めるもの」として4者会談を提案した。

 共和国は会談目的が「朝鮮半島で対話と協商を通じて停戦状態を終息させ、恒久的な平和の枠組みを設けることにある」との米国側の説明(97年9月5日付労働新聞)に留意し、予備会談を経て本会談に臨んだ。

 第1回会談は、会談提案から1年8ヵ月を要して97年12月にようやく開催された。以来、会談はこれまで5回行われている。

 共和国は、会談目的に沿って、朝鮮半島での先鋭の政治、軍事的対決状態を根本から清算し、米軍の軍事的干渉を終わらせる方途として、南朝鮮から米軍を撤退させ、停戦協定の当事者である米国に対して平和協定を結ぶよう主張した。

 これらの問題は、朝鮮半島での停戦状態を終わらせ、恒久平和を樹立するための根本問題として、4者会談で必ず論議し解決されるべき優先課題である。

 

Q なぜ会談が空転しているのか

A 北の提案を米・南が拒否したため/米軍撤退問題は4者会談の要

 南朝鮮から米軍を撤退させ、停戦協定調印の当事者である朝米間で平和協定を締結するという共和国の提案を、米国と南朝鮮が執ように回避し、「南北軍事当局の直通電話」「軍事演習の事前通告」など、南北対話に執着したためだ。

 1月に行われた第4回会談で「朝鮮半島の平和体制構築」「緊張緩和」に関する両分科委員会の運営方針などが決定され、今回の会談から実質的な論議に入った。だが、米国と南朝鮮が共和国の提案を拒否したため、会談ではむしろ会談参加双方の深刻な立場の違いだけが浮き彫りになる形となった。

 こうした南北対話を4者会談と絡めて進めようとする米国と南朝鮮の試みは結局、4者会談の目的とは合わない。

 米国は予備会談前の説明会の時から、米軍撤退問題を4者会談の枠内で討議できるとの態度を示し、第3回予備会談終了後には「いかなる論議も自由にできる」と、米軍撤退問題なども話し合えるという立場を表明していた。

 4者会談では「会談の要」(4月21日発朝鮮中央通信)である米軍撤退問題など、「核心事項についてまず論議しなければ意味がない」(金桂寛首席代表、日本経済新聞4月28日付)。

 議題設定は8月に開かれる第6回会談に持ち越されたが、共和国側は「こうしたまま歳月だけを重ねれば、これ以上興味をもたない」が、引き続き「もっと高い自覚をもって対するし、真に朝鮮半島の平和と安全を遂げようとする一貫した立場で忍耐強い努力を続けるだろう」(外務省スポークスマンが4月29日に言明)との立場を示している。

 

Q なぜ南からの米軍撤退を主張するのか

A 停戦協定でも撤退問題協議を明記しており、国連決議にも違反する

 南朝鮮からの米軍撤退問題は「4者会談の要」(4月21日発朝鮮中央通信)であって、これを抜きにしては朝鮮半島の平和保障は確立されない。

 朝鮮停戦協定(53年7月27日調印)では、米軍撤退問題を協議することが明記されている。

 共和国と中国、米国が調印した停戦協定第4条60項には、停戦協定調印後3カ月以内にワンランク高い政治会議を招集し、朝鮮からすべての外国軍隊を撤収させる問題などを協議することになっていた。

 つまり関係正常化のプロセスを明記した朝米基本合意文が調印(94年10月)された条件のもとで、停戦協定の当事者である米国が法的に交戦相手の共和国と強固な平和を保障し、交戦当事者間の敵対関係を解消して関係を正常化するために自国軍を撤退させることは、国際法上原則となっている。現在、米軍以外は朝鮮半島からすべて撤退しており、現実的に見ても停戦協定の当事者である米国が、法的に交戦相手の共和国と強固な平和を築くため、武力の撤退問題を論議しなければならないことは誰も否定できない。

 また、米軍の南朝鮮駐屯は、国連総会決議にも反する。

 75年11月の第30回国連総会で採択された共和国側決議3390bには、南朝鮮の「国連司令部」を解体し、すべての外国軍隊を撤退させ、停戦協定を平和協定に代える問題が含まれている。

 同時に、米国側決議3390aにも平和保障のための代案が整えられ次第、米軍が撤収するよう明記されている。

 さらに冷戦が終結したこんにち、冷戦時の論理で米軍の南朝鮮駐屯を合理化することはできない。

 米国は、いわゆる「ソ連の南下」「北の南侵」などを唱えて南朝鮮駐屯米軍がその「抑止力」として「平和守護」に寄与しているかのように宣伝してきたが、その論拠はすでに通じない。

 また、他国に駐屯させている兵力を撤収し、外国の軍事基地を撤廃するのは一つの国際的すう勢になっている。前米行政府は90年代初、南朝鮮からの3段階撤軍計画を発表し、1段階計画を遂行したと発表したことがある。

 

Q なぜ朝米平和協定が必要なのか

A 米が停戦協定の当事者だから/平和と安全保障の法的、制度的装置を築くため

 朝米間で平和協定を締結する問題も、朝鮮半島での平和保障のための最も根源的で本質的な問題である。 朝鮮半島の平和と安全を実質的に保障できる法的、制度的装置を構築しようとするものだからだ。

 停戦協定は、米国の相次ぐ違反によって条項の3分の2以上が破られ形がい化しており、朝鮮半島での敵対行為と武力衝突の再発を防止する制度的措置としての役割を何ら果たしていない。そのため朝鮮半島で強固な平和を保障するには朝米間で平和協定が締結されなければならない。

 米国が対象となるのは、米国が停戦協定の当事者であり、南に軍を駐屯させ政治・軍事・安保問題を握っているからだ。南朝鮮は協定調印を拒否したため停戦協定問題にかかわる法的資格も権限もない。

 米国と南朝鮮は、南北朝鮮間での新たな軍事チャンネルを構築しようとしているが、南北間では91年12月、和解と不可侵および協力・交流に関する合意書が採択され、不可侵に関する付属合意書を履行するための南北軍事共同委員会が発足している。つまり同委が稼働すれば、南北間の軍事的問題は解決するシステムになっている。また朝米基本合意文で関係正常化をうたった以上、交戦関係を規定した停戦協定を平和協定へと転換させ、敵対関係を解消することが米国に求められている。