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朝鮮学校の場所(1)/「教育改革」進める文部省


 日本の地に朝鮮学校が生まれて半世紀余り。在日同胞のたたかいと、それを支持する世論の高まりにもかかわらず、日本政府=文部省は朝鮮学校を「各種学校」の枠に押し込め、不当な制度的差別を続けている。日本の教育行政全般や他の外国人学校の現状、海外における外国人教育のすう勢などに広く目を向けることで改めてその矛盾を明らかにし、朝鮮学校の位置づけについて考える。 (東)

 

整合性欠く排除の論理/多様化、個性化と矛盾

門戸開放を認めず

  99年度入試から、各種学校である朝鮮大学校の卒業生にこれまで一切受験資格を認めてこなかった国立大学大学院が門戸を開いた。京大大学院と九州大学大学院の複数の研究科が独自の判断で行った決定だが、文部省はこの決定は誤りだとして認めていない。だが、皮肉にも門戸開放の動きの背景には、文部省が進める「大学院改革」の流れがある。

 文部省が97年1月に策定した「教育改革プログラム」の4つの柱のうちの一つは「大学改革と研究振興を進める」。その中の重要な項目が「大学院制度の改革」だ。大学審議会答申(昨年10月)などからその内容を見ると、大学院教育のレベル向上を目指す改革の方向は多様化と個性化。そのため、各大学院ごとの自主性を重んじる方向で諸制度の弾力化も指摘されている。

 今回、門戸拡大の措置を取った京大大学院経済学研究科の渡辺尚研究科長は「大学院改革の流れの中、様々な経歴を持つ人にも門戸を広げることで、積極的に優秀な人材を集めようというものだ」と語った。


「根幹に関わる問題」

 「教育改革」は、何も大学院に限ったことではない。

 例えば2002年度から義務教育の完全学校週5日制が実施される。これに沿って教科内容は3割減り、授業時間も弾力化、学校の裁量範囲も広がった。また昨年から今年にかけて、中高一貫教育制度の導入や大学入学年齢の引き下げ、専門学校卒業者の大学入学など、一連の規制緩和措置が次々に実施されている。

 こうして多様化、個性化を掲げ、そのために規制緩和を進める一方で、文部省は「各種学校」である外国人学校卒業生の大学、大学院受験資格は「国の学校教育の根幹に関わる問題」として断固拒否し、独自の判断で受験を認める大学の自治権を否定してきた。

 しかし実際には、すでに過半数の公私立大が認めている。今年度入試からはここに複数の国立大学大学院も加わった。さらに朝日新聞の調査によると、回答のあった97の国立大学のうち46大学の学長が「(認める方向で)改善すべきだ」と答えている。

 

内部でも疑問の声

 「何がどう根幹に関わるのか」。2月17日の衆院予算委員会第3分科会で保坂展人議員(社民)は有馬文相に詰め寄った。文相は明確な回答を避け、「(公・私立大に入った各種学校卒の)子供たちが一体本当に伸びたかどうか、問題があったか、こういうことをやはりきちっと把握しておく必要がある」と答弁した。

 「伸びたか、問題があったか」で判断するなら、文相がわざわざ把握に努めるまでもない。これまで受け入れてきた公・私立大で何の問題もなかったどころか、卒業後に学者として立派な業績をあげている朝鮮学校卒業生も多い。

 「根幹に関わる」という言葉には、朝鮮学校だけは認めたくない、排除したいという姿勢がにじむ。背景にあるのは、一貫した在日朝鮮人に対する同化と排除の政策だ。政治的な動機に基づく合理的な理由のない差別が、教育行政全体ので整合性を欠くのは当然だろう。文部省内部にも、矛盾を指摘する声があるという。