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新宿に朝鮮民族の彩り/アリランフェスティバル大盛況


 新宿アリランフェスティバルが16日、JR新宿駅前や歌舞伎町などで行われ、パレードやショーなど、朝鮮の民族文化をアレンジした大掛かりなパフォーマンスの数々に、道行く人の注目が集った。

 フェスティバルは、「Korea Is One」「朝・日友好」「国際親善」をテーマに、地域の在日朝鮮人がつくる実行委員会(委員長=具本憲・新宿青商会会長)が主催。金剛山歌劇団をはじめ、東京と神奈川の朝鮮歌舞団、地元同胞、朝鮮学校生徒、朝大生、日本と中国の歌手らが参加した。

 フェスティバルは午後1時過ぎに、JR新宿東口駅前(ステーションスクエア)と歌舞伎町のコマ劇場前でスタートした。コマ劇場前の一団はパレードを行い、駅前の会場に合流。新宿通り・紀伊國屋書店前でパフォーマンスを披露した朝大生らも、見物人を引き付けながら会場前まで練り歩いた。

 舞台で披露される多彩な演目には、通行人も興味津々の様子。足を止めてショーに見いっていた人々は、「衣装がきれいだ。みんな仲が良さそうで楽しい感じ」(岩井美佳さん、22)、「中国の延辺から留学で訪日したばかりでホームシック気味なので今日は楽しかった」(朝鮮族の趙光浩さん、28)などと語っていた。

 

新宿の在日同胞、見せた「老舗」の底力

多国籍地帯にも埋もれぬ誇り/朝鮮人にこだわり続ける

 新宿区の外国人登録者数は、2万人以上。都内で最も多い。その中で在日同胞は――。

 「あまり目立たない。一見、日本人と変わらないから」

 9年前に日本を訪れ、歌舞伎町近くで居酒屋を営むソウル出身の女性は、軽くそう答えた。

 夜ともなれば多国籍地帯と化す日本最大の盛り場・歌舞伎町を抱える新宿は、国際都市のイメージが強い。

 区内の外国人登録者中、同胞は4割を数える。外国人コミュニティーの「老舗」、総聯を中心とする在日朝鮮人社会も歌舞伎町に支部、商工会、朝銀を構え、活動も活発だ。

 しかし国際都市のイメージに直結するのは、南朝鮮から来た同胞や、他の国からやって来た新参のエスニック・グループだ。生まれながら身に付いた異国情緒、善きにつけ悪しきにつけ旺盛な行動力…自らの意思とは関係なく、彼らは日本人との「違い」を、常に周囲に見せ付けている。

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 「だからと言って、われわれが色の薄い存在だと思ってもらっては困る」

 16日の夕刻、歌舞伎町の焼肉店で行われたフェスティバルの打ち上げ。実行委員の1人、新宿青商会の高英禧幹事長(35)は語気を強めた。ほかの面々もイベント成功の興奮からか、顔はいささか上気気味だ。乾杯の音頭のもと、ジョッキを合わせる腕にも力がこもった。

 「祖国統一」「朝・日友好」「国際親善」、これらへの願いを、民族の伝統であり魂とも言える「アリラン」に託す――。このフェスティバルのテーマを裏打ちするのは、異国で半世紀以上を過ごしながらも、民族の魂を守って来たという、在日同胞のプライドだ。

 「学校を守り、言葉を守ってきた総聯の同胞たちだからこそ、こういうことができる。南朝鮮の同胞に何かを呼び掛ける力も持ってる」(高幹事長)。

 イベントに見入る南朝鮮の同胞らは、「日本には会社の研修で来たばかりだが、僑胞が多いことは聞いていた。凄くエネルギッシュなので感心した」(男性、27)、「今日は民族の誇りを感じた。総聯も、なかなかやると思う」(男性、26)と賞賛を惜しまなかった。

 民族衣装に身を包み、新宿のど真ん中を練り歩く姿は、時代の移り変わりの中でも「朝鮮人としての自分らしさ」にこだわり続ける同胞らの生きざまを、見せてくれた。  (賢、順)