朝鮮学校の場所(4)/アイデンティティ守る権利
空虚な日本の「国際化」/苦しむ外国人、アメラジアン
誇りを持てる教育を
昨年6月、米軍人・軍属と沖縄の地元女性との間に生まれた「アメラジアン」のための「アメラジアン・スクール・イン・オキナワ」が宜野湾市に開校した。4月現在で小〜中相当の児童・生徒が26人いる。
在日米軍基地の75%が集中する沖縄にはこうした子供たちが千人以上いると言われる。日、米、2重国籍と国籍は様々だ。
親が現役軍人の場合には基地内学校は無料だが、離婚したり父親が民間に転職すると、年間約140万円の高額な授業料が必要だ。また日本の公立学校では、日本語が不得手なことや外見、反米的な住民感情によりいじめられることも多い。学校に行けなくなったり、「自分は何者か」で悩み苦しむ子供は多かった。
同スクール設立の母体となったのは、母親たちを中心にした「アメラジアンの教育権を考える会」だ。セイヤー・みどり代表は「基地内学校やアメリカンスクールは米国人のため、日本の公立学校は日本人のための学校。2つの文化、言語をルーツに持つこの子たちには、アメラジアンとしてのアイデンティティを育み誇りを持つためのダブルの教育を受ける必要がある」と話す。思いは切実だ。
その「お手本」(セイヤー代表)となったのが、朝鮮学校の存在と、民族教育権の保障を求める在日同胞の運動だ。日本という国の「都合」によって存在することになったマイノリティとして、差別や偏見の多い社会の中で自らのアイデンティティを守り、誇りを持つための教育権を主張する気持ちは、解放直後から民族教育を行ってきた在日同胞と共通点が多い。
朝鮮学校から学んだ
兵庫には、県内の全朝鮮学校をはじめドイツ、カナダ、ノルウェー、中華系など7法人19校の外国人学校による外国人学校協議会がある。同年1月に起きた阪神・淡路大震災のために数校の外国人学校が建て替えを迫られたのをきっかけに、助成の獲得や地域の国際化への貢献で協力し合おうと95年7月、全国で初めて結成された。
生徒間の交流イベントを開いたり、各種の催しにも積極的に参加。また昨年8月にはジュネーブの国連人権小委で代表が発言するなど、活動範囲を広げている。
そのうちの1校、今年創立100周年を迎える神戸中華同文学校(中央区)は6年制の小学部、3年制の中学部を持つ。昨年度の生徒数644人。都市部にある大きめの朝鮮初中級学校とほぼ同規模だ。授業はすべて中国語。さらに小学部では中国語の授業が週に10〜11時間と、母国語教育に最大の力を入れている。その分、朝鮮学校よりも小学部で日本語、中学部で英語が若干少ないが、他はほぼ「1条校」に準拠した同様のカリキュラムだ。
同校では10年ほど前、財政難から「1条校」の認可を受けようかという話が出たことがあるが、結局見送られた。「『1条校』の基準を満たすと、言葉を核とする民族教育ができなくなる。それでは学校が存在する意味がない」(蔡勝昌事務局長)からだ。
朝鮮学校以外に、全国には50校弱の外国人学校、国際学校があるが、大半は朝鮮学校と同じ各種学校だ。なかにはアメラジアン・スクールのような無認可校もある。
マリスト国際学校(神戸市須磨区)の大迫嘉昭事務長は「日本の『国際化』はイメージ先行の空念仏」と指摘するが、国際化時代に対応できない日本の学校教育制度は「普通の日本人」以外の子供たちを苦しめている。朝鮮学校のたたかいはそうした子供たちを力づけており、兵庫でのように、共闘の動きも始まっている。神戸中華同文の蔡事務局長も、アメラジアンスクールのセイヤー代表も、「教育に対する権利意識を朝鮮学校から学んだ」と語る。 (東)