都内朝鮮学校生徒対象にコンサート/オーケストラでクラシック、朝鮮の曲
東京都内の朝鮮学校児童・生徒のための音楽鑑賞会(主催=教職同東京、協賛=未来企画)が5月22日、東京・葛飾区のかつしかシンフォニーヒルズで開かれ、都内の朝鮮学校に通う初級部4年生〜中級部3年生全員が招かれた。タクトを振ったのは同胞指揮者、金洪才氏。演奏は10〜20歳までの団員によるジュニアフィルハーモニックオーケストラだ。朝鮮学校の児童・生徒たちだけのためにオーケストラの本格的なコンサートが開かれるのは初めてのことである。
朝鮮学校の子供たちがオーケストラに親しめる機会を設けようという趣旨で企画されたコンサートは、オーケストラの魅力を分かりやすく伝えるための工夫が随所に凝らされていた。
子供たちに配られたパンフレットには、曲の解説、オーケストラの配置図、鑑賞する際のマナーなどが丁寧に書かれていた。
1曲目の「『こうもり』序曲」(ヨハン・シュトラウス2世)が終わると、指揮者の金氏はオーケストラの構成と楽器について説明。「もののけ姫」や「となりのトトロ」のテーマ曲のメロディーで楽器の音色が紹介されると、大歓声が起きた。
続いて演奏された「青山里に豊年がきたよ」では、東京朝高生がチャンセナプとケンガリで共演。ほかにもブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」、スメタナの「モルダウ(『わが祖国』から)」が演奏され、アンコールでは朝鮮の曲「臨津江」が披露された。
東京第5初中・初級部6年の尹梨奈さんは「テレビでもよくオーケストラを見るけど、目の前で聴くのは全然違うし、言葉で言い表せないくらいすごくよかった」と感想を話した。
「芸術教育を充実させるには、教室の中での授業だけでは限界がある。小さい頃から本物に触れる機会を作ってあげないと」と語る金氏。日本学校の課外授業として行われる演奏会に出演する機会も多く、「そんな機会もない朝鮮学校の子供たちに幅広い選択肢を与え、可能性を花開かせるために自分自身ができること」と、今回のコンサートを発案し、1年前から準備をしてきた。
同世代が演奏する姿が刺激になるだろうとジュニアフィルと契約。金氏はもちろんボランティア出演だ。プログラムの内容については教員らと検討を重ね、初中級学校の音楽の教科書に載っている曲を中心に、オーケストラの雰囲気を楽しめる曲を選んだ。
一方、コンサートの実現を後押ししたのは東京、西東京の若い商工人らによる「未来企画」。昨年の新年会の場で、金氏から提案を受けたのがきっかけだ。
民族教育の発展に寄与しようという目的で94年10月に発足した「未来企画」は、自動販売機による飲料水販売の収益を各学校に寄付するなどの物理的な支援と共に、昨年だけでも東京都内の英語教員らの海外研修、教育講演会など、民族教育を幅広くバックアップするための多彩な活動を行っている。
安益チュン幹事は「ただお金を寄付するのはちゅうちょする同胞でも、今回のような具体的なアイデアには協力してくれる。子供たちの可能性を広げるために、今後も多彩な活動をしていきたい」と語っていた。