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朝鮮学校の場所(5)/マイノリティーの教育


常識はずれの差別政策/固有の文化・言語尊重が世界の流れ

国連が差別是正勧告

 世界各国におけるマイノリティの子供たちの教育は、固有の文化と言語を尊重する方向に向かっている。

 マイノリティとは、民族、国籍、宗教、言語などにおける当該国・社会での少数者を指す言葉で、先住民や移民、難民なども含まれる。国際的には、在日同胞も日本におけるマイノリティとされている。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は1960年に採択した「教育差別撤廃条約」で、マイノリティがマイノリティ自身で自分たちの教育を行う権利を規定した。92年に採択された国連の「マイノリティ権利宣言」は、マイノリティが母語を学び教育を受ける十分な機会を持てるようにしなくてはならないと主張した。

 さらに90年9月に発効した国連「子どもの権利条約」は、マイノリティの子供たちが自己の文化を享受し自己の言語を使用する権利を保障したうえで、すべての子供には平等に教育を受ける権利があるとし、その目的の一つに固有の文化的アイデンティティ、言語の尊重を掲げている。

 同条約の各国での順守状況を審査する国連子どもの権利委員会は昨年6月の対日審査で、日本政府が朝鮮学校を「各種学校」扱いにすることで、子供たちが著しい不利益を被っていることを集中的に論議。朝鮮人を含むマイノリティの子供たちへの差別的な取り扱いについて全面的に調査、解消するよう日本政府に勧告した。同条約を94年4月に批准した日本には、在日同胞が自らのアイデンティティと言語を守るために運営している朝鮮学校を認め、その教育権を尊重する義務がある。

 審査の際、文部省の代表らは「差別はない」「外国人学校は基準が違う」などと主張したが、勧告は、こうした主張がいかに世界の常識に反するものかを証明した。

 

独自の私立学校設置

 移民や先住民族などマイノリティの多いイギリス、カナダ、オーストラリアなどでは70年代中盤以降、マイノリティの教育はマイノリティ自身でという認識が高まっていった。オーストラリアには先住民族アボリジニーの学校がある。先住民族による独自の教育が押し進められているエクアドル、少数民族自治州の学校では中国語より民族の言葉を優先して教えることが法で定められている中国などの例もある。

 国連子どもの権利委の審査をすべて傍聴、世界各国での子供の権利問題に詳しいNGO「子どもの人権連」の平野裕二さんは、「民族の言葉による民族教育を保障し、その内容もマイノリティ自身が決めていく流れがだんだんと進んできている。しかし、政府からの直接の援助もなく体系的な民族教育をこれだけの規模で行っている日本の朝鮮学校のような取り組みは、世界的にも極めて珍しく、誇れるものになっていると思う」と話す。

 国連が91年に発行した「民族的、宗教的、言語的マイノリティの人権に関する研究」は、学校教育の中でマイノリティの言語使用を図るための措置として、独自の言語で指導を行う初・中等レベルの私立学校が設置されているケースを紹介している。これらの学校は通常、公立学校より劣った水準で運営されることのないよう指導、保護を受けているという。

 外国人学校や国際学校を「各種学校」の枠内に押し込め、徹底的に差別する日本政府の「常識」は、世界の常識と大きくずれている。ましてや在日同胞は日本による朝鮮侵略の結果、「在日」することになった。そしてその民族教育は、日本に奪われた言葉と文化を取り戻すために始まったものだ。朝鮮学校は、日本政府に積極的に保護される理由はあっても、差別される理由はない。(東)