国境越える音楽の力/第2回 響け! 広島朝・日友好の歌声
朝・日の著名な音楽家、幅広い愛好家が出演
和太鼓とチャンダン、民族楽器と管弦楽など多彩な競演
「目頭が熱くなった。朝・日の新たな未来、希望に満ちた友好関係が見えるようだ」(秋葉忠利・広島市長)。朝・日の出演者300余人が奏でる友好の歌は、観客に大きな感動を与えた。朝・日の音楽家、子供たちの共演によるコンサート「第2回 響け! 広島朝・日友好の歌声」(主催=同実行委員会、後援=広島市、県・市の各教育委員会、中国新聞社、中国放送)が6日、広島市のエリザベト音楽大学セシリアホールで開かれ、秋葉市長、総聯広島県本部の金鎮湖委員長をはじめ、同胞と日本市民ら700余人が観覧した。(榮)
「目頭熱くなった」と市長
1991年以来8年ぶりに開かれた同コンサートには、指揮者の金洪才さんをはじめチャンセナプ演奏家の崔栄徳さん(金剛山歌劇団)、ピアニストの金貞淑さん、和太鼓奏者の今福優さん、声楽家の門野光伸さんらが特別出演した。
コンサートは、「鳳仙花」「赤とんぼ」「故郷の春」など朝・日の代表的な愛唱歌、童謡の合唱で幕を開け、広島初中高と市内の小学校児童による合唱「ウスムコッ(にこにこにっこり)」「だんご3兄弟」、朝鮮舞踊も交えた民族舞踊曲「慶太鼓」、同胞演奏家によるピアノとオーボエ「故郷」など、多彩な演目が披露された。
とくに県内の各管弦楽団に所属する日本の演奏家たち、広島初中高の吹奏学部員とOB、民族楽器愛好家らで構成された管弦楽団が金洪才さんの指揮で演奏した「アリラン」は、大喝采を浴びた。
市民レベルの交流から
「広島に暮らす朝・日市民が一緒に一つの歌を歌うことに大きな意味がある。国と国の問題は複雑になりがちだが、音楽を楽しむ喜び、人と人との交流から生まれた今日のコンサートは、『音楽は国境を越える』ということをまさに実感する場だった」
声楽家で音楽教師の門野さんは朝鮮民謡「舟唄」を朝鮮語で歌い上げ、観衆の大きな拍手を浴びたが、門野さんをはじめ出演者の多くは91年の第1回コンサート以来、文芸同広島支部と交流を深めてきた。
和太鼓とチャンダン「異なる響き」は、和太鼓と朝鮮の民族打楽器が互いの魅力を引き出しながら共鳴しあうまさに朝・日親善の響き。世界的に活躍する和太鼓奏者の今福さんは、チャンダンのリズムに即興で応えて観客を唸らせた。
両国の打楽器が共鳴しあう音が胸に響いたという観客の沖本常傳さん(48)は「こうした市民レベルの交流が真の友好につながるのだろう」と語っていた。
コンサートのフィナーレは、朝・日親善への思いを込めて前回作曲された「虹の架け橋」だった。
作曲したのは、前回に続いて音楽監督などを務めた田中元暁さん。中学校の音楽教師であり、地域の女性コーラスの指導も行っている。そうした人脈と経験を生かし、日本側の出演者の取りまとめなどコンサートの準備に奔走した。
「文化交流とは特別に構えてやるものではなく、日常生活の中にあるものだと思う。今回も準備過程を通じて、日常的な交流の大切さを実感した」
地域のレベルアップも
一方、中心になってコンサートを企画したのは、声楽、器楽、民族器楽、民族チャンダンの4部門別に活発に活動している文芸同広島支部音楽部だ。県内の同胞音楽愛好家が多数参加、広島出身だが現在は他の地方で活躍する若い音楽家らも出演するなど、同音楽部のこの間の地道な活動なしにコンサートの成功はなかった。声楽部の責任者、金美枝さんは「今回のコンサートは、地域同胞社会の音楽文化をレベルアップさせる面でも大きな意義があったと思う」と語る。
また、広島朝高吹奏学部の金澄美さん(2年)は「光栄にも金洪才さんの指揮で演奏しながら、人を感動させることのできる音楽の魅力を再発見した」と話す。コンサートは、広島で未来の才能を育む土台を築くための一つのきっかけにもなったようだ。