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民族学校出身者の受験資格問題/一橋大でシンポ


 シンポジウム「民族学校出身者の大学受験資格問題〜その『障壁』の所在〜」が5月29日、東京の一橋大学で行われ、学生と市民ら約90人が参加した。

 「外国人学校出身者の大学受験資格を求める一橋大生の会」が主催した。世論の厳しい批判にも関わらず、文部省と国立大学が、外国人学校卒業者に対してかたくなに門戸を閉ざしていることに関し、何が問題解決の障壁になっているかを考えようというもの。

 パネラーは、問題の是正を訴えている田中宏・一橋大学教授、国際人権法に詳しい岡本雅享氏、「民族学校出身者の受験資格を求める全国連絡協議会」代表の文鐘聲氏(阪大生・大阪朝高出身)、東京第9初級・アボジ会の会長を務める金容星氏の4人が務めた。

 シンポでは、まず4人のパネラーが報告し、文部省の政策の不当性、排除を正当化する論理の矛盾などについて指摘。質疑応答では、会場の参加者からも積極的な発言があった。

 

討論から

「整合性ない文部省の主張」

目立つ「本質見ぬ言い訳」

 「朝鮮学校出身者がうちの学部を受けるなら、文部省の見解がどうあっても、受けいれるべきだと思う。学部内で、よく同僚とそういう話をする」

 シンポの質疑応答で、会場から発言に立ったある国立大学の教授は、きっぱりと言った。

 公私立大学は半数以上が外国人学校卒業者の受験資格を認め、昨年には、国立の京大大学院の2研究科と、九州大大学院の1研究科が朝鮮大学校卒業者に門戸を開放している。こうした現状を見れば、「認めない」とする文部省の政策が、日本社会に受け入れられていないことは明らかだろう。

 もっとも、当の文部省が、自らの言い分に筋を通せないでいる。

 田中氏は次のように指摘した。

 「文部省は1965年に都道府県に対し、朝鮮学校に各種学校の認可を出さないよう指示する通達を出した。今ではすべての朝鮮学校が、都道府県の独自の判断に基づいて各種学校の認可を得ているが、通達は今も撤回されていない。ところが日本政府は、国連機関に在日外国人の人権状況を報告する際には、民族学校を各種学校として認可している旨に言及している」「文部省のこうした主張には、全く整合性がない。ややこしい学校は認めたくないという理由から通達は出たのだろうが、多様性を求める今の時代には、そういう考え方が成り立つ余地すらない」

 それでも、問題解決を阻む「障壁」が残っているのはなぜなのか――。

 「学校の助成金を増額して欲しいと行政に求めたら、財政難を理由に断られた。しかし、かりに朝鮮学校の子どもが日本学校に行くことになったら、いくら財政難でも行政がその子の分の補助を出せないなどということはないはず」。金氏はこう話しながら、民族教育の権利の問題を訴えても人権や教育などの本質的な問題が考えられず、さ末的な言い訳にすり替えられる現状を指摘した。

 受験資格に関しても、門戸を閉ざす国立大は、この問題を人権や教育の倫理の面から考えず、文部省との関係に気を配るあまりに判断を誤っていると言える。

 実際、「一橋大生の会」メンバーで大学院生の慎蒼宇さんは、「うちの大学も、予算の問題があるから文部省に従わざるを得ないという姿勢に終始している」と話す。

 また同会の岸正行さん(社会学部3年)はシンポのしめくくりで、「こういう場で何かを感じたら、どんな小さなことでもいいから行動につなげて欲しい。より多くの人が正面からこの問題を訴えることで、文部省や大学に本質的な問題解決を迫りたい」と呼び掛けていた。