時事・解説/朝鮮西海―武力衝突事件
南朝鮮海軍艦艇が15日、黄海南道南東方の共和国領海に侵犯して、朝鮮人民軍海軍艦艇に体当たりし、銃砲射撃を加えて1隻を沈没、3隻を破損させる武力衝突事件を起こした。だが逆に南朝鮮当局は共和国の艦艇が水域を侵犯したかのように世論を操作している。(基)
水域を侵犯したのはどちらか。
南朝鮮海軍が侵犯/国際法上認められない「北方限界線」
水域を侵犯したのは南朝鮮海軍艦艇だ。南朝鮮当局は「北方限界線」(NLL)を根拠に共和国が水域を侵犯したと主張しているが、NLLは南朝鮮当局が勝手に設定したもので、共和国領土の甕津半島にあまりにも接近しすぎている。共和国はNLLを認めていない。
停戦協定(1953年7月調印)では、軍事境界線(38度線)とそこから双方2キロを非武装地帯と明記したが、海上のラインについては明記されていない。西海岸の島の管理については、白○島(○は令に羽)、大青島、小青島、延坪島および隅島の5つの島だけを国連軍総司令官が管理し、それを除いた黄海道と京畿道の境界以北および以西のすべての島は、朝鮮人民軍最高司令官が管理するよう規定されている。
NLLについて米国務省のルービン報道官も15日、必ずしもすべての人間に受け入れられているものではない、と語っている。
また東亜日報11日付は、国際法学者や国際政治学者らの意見を総合すると、南北間の合意がないためNLL以南の海上は厳密に言えば、国際法的概念のわれわれ(南朝鮮側)の領海ではない、国際法上の領海とはあくまでも特定の主権国家が3海里(1海里=約1852メートル)あるいは12海里の範囲を設定し、かりに周辺国と重なる部分があれば互いに協議し認定する概念という点を勘案すれば、NLL以南は(南朝鮮側の)領海ではない、と報じている。
海洋法に関する国際連合条約では、各国は12海里を超えない範囲で領海の幅を定める権利を有している。共和国はこれまでも甕津半島南側で漁業を行っており、事件が発生した地点が共和国の領海であることは明白だ。
南側はどのように挑発したのか。
4日から計画的に/9日からは「体当たり作戦」
南朝鮮国防部長官と合同参謀本部議長が主導して今回の事件を謀議し、9日からは正常な勤務を遂行している共和国の警備艇に「体当たり攻撃作戦」をとるよう指揮したからだ。
南朝鮮海軍艦艇は、共和国の漁船がワタリガニ漁を行っているのを知りながら、4日から15日までの間、わざと黄海南道康○半島(○は令に羽)西南の共和国領海を侵犯し、共和国の漁船を威嚇、彼らの平和的で正常な活動を妨害した。
5日には、小延坪島から共和国の漁船の動きをうかがっていた南朝鮮の戦闘艦船3隻が海上警戒線を越え全速力で北上した。7日は3回にわたって小延坪島と大青島に配備されている戦闘艦船9隻が5日と同じく双橋里東南方の共和国領海に侵入。8日には8隻の戦闘艦船集団が攻撃隊型を編成し、海上警戒線を越え共和国領海に侵入してきた。
こうした挑発行為に朝鮮人民軍海軍警備艇は自衛行動で対処したが、南朝鮮海軍艦艇は警備艇の正常な巡察行動までも妨害し、9日と11日には3回にわたって共和国海軍艦艇に対する「体当たり攻撃作戦」に出てきた。14日には南朝鮮海軍の高速艇、警備艇、哨戒艇、護衛艇など数十隻の艦船が追加配備された。
そして15日に12隻の戦闘艦船が再び共和国領海に侵入。9時5分から攻撃隊型を編成して機動展開を始め、9時12分、故意に共和国艦艇に体当たりし、150余発の砲射撃と7000余発の機関銃射撃を加えた。9時15分ごろには20余隻の艦船が共和国の艦艇に銃砲射撃を加える事態に達した。その結果、共和国の艦艇1隻が沈没し、3隻が破損した。
軍事挑発の目的、背景は。
南北の和解にブレーキ/朝米関係改善にも
南北の和解、朝米関係改善にブレーキをかけるためだ。
南北間では現在、現代グループによる金剛山観光が順調に進んでいる。民間レベルでの他の経済協力事業も浮上しており、文化・スポーツ部門での交流も予定されている。とくに21日からは、1年2ヵ月ぶりに北京で南北当局間による副部長級の会談が予定されていた。共和国側は2月3日の政府・政党・団体連合会議で、南側が解決すべき先行事項が上半期に解決されたうえで、下半期に南北高位級政治会談を開催しようと提案した。
こうした南北の和解、民族の大団結、そして祖国統一の気運が高まる中、南朝鮮海軍による武力衝突事件が発生したということは、南朝鮮内の反統一強硬勢力による策動が作用したと言えよう。
また、米実務代表団の金倉里訪問によって「地下核施設」疑惑が解消され、朝米関係改善を含む朝鮮半島情勢が好転する兆しが表れているだけに、クリントン政権の外交政策を心よく思わない米国内の強硬保守勢力の思惑も見え隠れしている。
南朝鮮地域の軍権は米国が直接行使しているため、南朝鮮海軍による勝手な軍事行動は考えられない。
とくに米国は最近、第2の北侵戦争計画である「作戦計画5027」を「作戦計画5027−98」に改定した。この新しい作戦計画は、共和国の軍事的動きに対する「兆候判断」を先制攻撃の重要な条件に上げ、そうした「兆候」があっただけで、即時先制攻撃を行うようなっている。
さらに米国防総省は18日、空母コンステレーションを日本海に派遣した。また16日には米海軍所属の大陸間弾道ミサイル発射能力を有する最新型の原子力潜水艦バッファロー(6000トン級)とカメハメハ(8000トン級)が南朝鮮の南海基地に到着している。
共和国はどう対応したのか。
自制力で拡大防ぐ/南側との接触を当分の間制限
15日に共和国の艦艇が沈没する重大な事態に至ったことで、祖国平和統一委員会スポークスマンは16日、声明を発表し、南朝鮮当局の軍事挑発を糾弾、謝罪を要求するとともに、南側人員の平壌訪問と接触を当分の間、制限もしくは中止することを明らかにした。
また同日の板門店将官級会談で共和国側は、米国と南朝鮮の謝罪を要求した。
これに先立ち11日には朝鮮人民軍板門店代表部スポークスマンが声明を通じて、南朝鮮当局に(1)共和国領海に侵入したすべての艦艇を即時、撤収させる措置を講じる(2)領海侵犯を謝罪し、世論ごまかしを中止する(3)今回の海上挑発事件により生じた結果について全面的に責任を取る――よう求めた。にもかかわらず南朝鮮海軍の軍事挑発は、15日には重大な事件にまで拡大し、16日にも共和国領海を侵犯している。
15日発朝鮮中央通信は「相手側による武力挑発が全面戦へと拡大しなかったのは、全面的に人民軍兵士の忍耐力と自制力の結果である」と強調した。
南朝鮮側の挑発行動/(16日現在)
4日 |
康○郡(○は令に羽)双橋里東南方の共和国領海で漁業を行っていた漁船に、南朝鮮の海軍艦船が放送で威嚇 |
5日 | 小延坪島から共和国の漁船の動きをうかがっていた艦船3隻が海上境界線を北上し軍事威嚇。朝鮮人民軍海軍警備艇が現地に出動すると、艦船は南側に逃走 |
6日 | 延坪島海域に配置された艦船数隻が人民軍海兵の身辺を威嚇 |
7日 | 8時50分頃と12時30分頃、14時50分頃の3回、小延坪島と大青島に配備されている艦船9隻が共和国領海に侵入 |
8日 | 5時頃、艦船5隻が再び双橋里東南方の共和国領海に侵入したが、人民軍警備艇が緊急出動し、海岸砲兵が射撃態勢を取るや逃走。6時頃には3隻を増強した艦船集団が共和国領海に侵入 |
9日 | 5時30分頃に14隻、12時50分頃には20隻の艦船集団が双橋里東南方沖合の共和国領海に侵入。正常な巡察活動を行っていた人民軍海軍艦艇に衝突 |
10日 | 海軍高速艇が北上 |
11日 | 17時、合同参謀本部が全軍に「非常警戒態勢」を下達。南朝鮮「国会」国防委員長が仁川の海軍第2艦隊司令部を訪問 |
12日 | 海軍高速艇が放送で対北対決宣伝 |
13日 | 延坪島の周辺で海軍参謀総長の参加のもと北侵を想定した海上訓練実施 |
14日 | 南朝鮮海軍高速艇、警備艇、哨戒艇、護衛艇など数十隻の海軍艦船が前線に追加配置 |
15日 | 8時50分頃、12隻の艦船が双橋里南東方の共和国領海に侵入し、9時5分から戦闘隊型を編成し機動展開を始め、9時12分からは艦艇に体当たりし、150余発の砲射撃と7000余発の機関銃射撃。9時15分頃には20余隻の艦船が銃砲射撃。共和国の艦艇1隻沈没、3隻破損 |
16日 | 8時頃、7隻の艦船が双橋里南東方の共和国領海に侵入。8時30分頃には11隻侵入(6〜18日発朝鮮中央通信より) |